◇ ページ42
気が重かったが、オフィスの玄関ドアをゆっくりと開ける。
『お疲れ様です…』
消え入りそうな声で挨拶をすれば、こうちゃん、ふくらさんから挨拶が返ってきて。
「Aちゃんお疲れさま」
とCEOからも挨拶と柔らかい微笑みをもらったのだった。
だが、今はその笑顔すらまともに見ることができない。
私は卒業後、ここにいることを求められていない。
そしてそれを決定したのも彼だから。
「友達と会ってたんだっけ?」
ふと隣に座るこうちゃんから声をかけられた。
『うん、就活の話してきたよ』
私が憂鬱そうに返事をすれば、こうちゃんは目を丸くした。
「え!あ、そっか!Aももう4年か!」
彼の中ではどうやら私はまだ1〜2年生くらいでいるらしい。
「就活は大変だよなぁ。まぁ、俺はしたことないけど」
羨ましすぎる彼を、私はじとっとした目で見つめる。
「Aだって、ここに就職するんだから就活しなくていいじゃん」
ふとそんなことを言われ、私は思わず目を見開いた。
彼は私がQuizKnockの内定をもらっていないことを知らないらしい。
「こうちゃん、Aちゃんだって色々考えてるんだろうから、あんまり口出さない方がいいんじゃない?」
すぐにCEOからの制止が入り、こうちゃんはそれ以上何も言わなくなった。
「Aちゃん、就活頑張ってね」
口調こそ優しかったが、彼のその一言は私をどん底に突き落とした。
「伊沢さん、Aが他の会社に就職するの応援するの?いつも“片時も離れたくない”!って感じなのに?」
こうちゃんが何やら小さな声で彼にブツブツと呟いていたが、彼はそれをすべてスルーした。
不思議そうな顔をしているこうちゃんを横目に、私はまたため息をつくのだった。
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作者名:*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 6時