独善的トポロジー izw ページ40
3月1日、ついに始まる。
そう、地獄の就活が。
＊＊＊
「あー！もう嫌だ！髪も黒染めしなきゃいけないし、スーツ着るのも地味な化粧すんのもほんと嫌！！」
まだまだ寒い日が続く春休みの中、私は高校時代の友達とカフェに来ていた。
明るく染めた髪をゆるく巻いて、ツヤのある真っ赤なリップがよく似合う彼女。
確かに普段の彼女からは、就活生特有の黒髪黒スーツという格好は想像がつかない。
目の前でまだ始まってもいない就活への恨みを延々と挙げ連ねる彼女に苦笑しながら、私は果肉の入ったフルーツティーを口に含んだ。
『就活終わったらいっぱい遊ぼうね』
そう言うのが精一杯で。
自分の中にも漠然とある就職先や将来への不安よりも、今は彼女を宥める方が先だと思った。
「うん…遊ぶ…」
案外アッサリと了承してくれたことに驚きつつ、私は学生最後の1年をどのように過ごそうかとぼんやり考えるのだった。
「Aは？就活するの？それともQuizKnockに就職決まってんの？」
ふと彼女からそう尋ねられ、私の中の時が一瞬だけ止まる。
そう、私はなんとQuizKnockへの内定を貰えていないのだ。
私と同学年の他のライターは、伊沢さんから「卒業後、このままうちに就職すれば(笑)」なんて軽いノリで誘われているというのに。
なぜか伊沢さんは、私にその言葉をくれない。
さすがに彼女が正式に自分の会社に入社するのは嫌なのだろうか。
それならそうと言ってくれればいいのに。
というわけで、私は就活を余儀なくされた。
院に進むことも考えたが、私は研究者には向かないことをこの3年間で何となく察した。
図々しくも、私は勝手にQuizKnockに入社させてもらえるものだとばかり思っていたから、それが叶わないなら他の企業を受けるしかない。
『私も就活するよ。お互い頑張ろうね』
彼女にそう力なく笑いかけるのが精一杯なくらいには、私はQuizKnockに就職できないことを寂しく思っていた。
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作者名：*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年3月14日 6時
