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大学の合格発表から少し経って、久々にAと会った。場所は俺らにとっての“はじまりの場所”と言っても過言ではない駅のベンチ。
最初より少し距離を詰めて座るそこは、まさに俺たちの指定席。
「福良さん」
「ん?なに?」
彼女の纏う空気から感じられるのは、きっと俺が考えていることと同じ。同じこと思ってたんだ、という嬉しさと同時にもうこの日が来たのか、という落胆。
「私は、受験と遠距離恋愛を両立させる自信はありません。福良さんみたいに器用じゃないので、1つのことしか集中出来ません」
「うん。俺も、新しい生活で手一杯になると思うよ」
そんなことない、何とかする、なんて無責任なことは言えない。
「だから、、お別れしましょう。きっと福良さんには私みたいなお子様より、もっと綺麗なお姉さんがお似合いです」
「俺はね、Aには近くでちゃんとAのことを守り続けてくれる人がお似合いだと思うよ」
「福良さんだったら、良かったのにな」
「、、ごめんね。もう向こうの住む家も決まったんだ。住所、渡しておくから、もし何かあったら連絡して」
「良い連絡だけ、大学合格とか良い連絡だけさせてください」
「うん、良い連絡が来るの待ってるね」
1年後、大学合格の報せが届いた。さらにその後、卒業と就職が決まった報せが届いた。
そして昨日、Aから最後の手紙が届いた。
“福良さんへ
東京での生活にすっかり慣れましたか?
テレビでもご活躍されているあなたと、楽しい青春時代を送れたことは私の良い思い出になっています。
きっとこの手紙があなたへ送る最後の手紙となるでしょう。
この春、私は結婚することになりました。
私のことをちゃんと守ってくれる人です。
福良さんにも素敵な方と結ばれる日が訪れ、幸せな日々を過ごされますように、遠くから陰ながら願っております。
Aより”
▽▽
彼が冒頭の手紙を書いているのはこの最後の手紙の返事を書いていて、次ページでAさんが読んでいるのは、その返事を読んでいる描写となっています。
進学や就職を機に“遠距離恋愛”か“別れ”か、その選択に悩んだことがある方も居るのではないでしょうか。
私自身も遠距離恋愛を経験し、その中で手紙のやり取りをしてました。この電子機器の発達が著しい時代に、、とは思いますが、やっぱり手書きの文字は味が出ますよね。だから私は手紙が好きです。
作品テーマ:卒業、思い出
作者:亜杞
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作者名:*ゆ う* x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 6時