岩本くんは結婚したい

何回でも言おうと思う ページ28

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「こっちこっち」







ひょいっと手をあげて、私を呼ぶ岩本さん。久しぶりのデートだと言うのに、相変わらずこの人は変装は皆無みたい。

それが岩本さんらしくて、私はすきだけど。














『お待たせしました』

「はい。お手をどうぞ」

『ふふっ、なんかキャラ違うね？』

「今日はより特別な感じで」















ちょっと暗くなってきた頃の街並みを眺めて、いつものように岩本さんの車でドライブする。海が見たいといえば海に、遠出をしたいといえば日帰りできるくらいの絶妙な距離に、いつも連れて行ってくれる人。














「じゃーん。着いた！！」

『っわぁ！すごい！綺麗！！』

「今日は横浜です」










クルージングと書かれたチケットをひらひらさせて、岩本さんは足取り軽く私をエスコートする。観覧車とかクルージングとか、私が好きそうなところをよく選んでくれてるなとびっくりする。













「最近思うことがあるんだけど」

『なんですか？』











船に乗ったと同時に考え込み出す岩本さん。なんだろうこの感じ、だいたい改まって何か言うときは、嫌な予感しかしないけど。












「Aちゃん最近さらに可愛くなったよね？」

「俺の勘違いかな？だてさんも言ってたしなぁ…」











ほらほら、いつもこんな感じ。かなり慣れてきたから、もう驚かないで笑って返せるくらいになったけど。やっぱり言われるたびに心臓がもたないのは、前と比べて私と岩本さんとの関係性がちょっと変わったからだと思う。













「何回でも言おうと思うんだけどさぁ〜」

『なんてっ…？？』













クルーザーの音で岩本さんの声が切れ切れになる。お互いに笑っちゃうくらい大きな声で話していて、周りにも聞こえるんじゃないかってヒヤヒヤするくらい。













「俺と結婚しよう、Aちゃん！」











満面の笑みでこちらを見ていて、岩本さんから私も目が離せなくなる。











「毎日一緒にいたいし、毎日好きって伝えたいから！」

「俺と結婚してください！！」













クルーザーが止まって、ちょうど音がなくなった瞬間に、岩本さんの結婚してください！が船上に響き渡る。


初めてそれを言われたときは、はい？ってなって。何だこの人ってなったのに。







『っ…うん、！』










今はとても、言い表せないくらい、岩本さんと結婚したい自分がいる。






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