ちょっと切ない ページ13
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慌てて靴箱に向かう途中、見たくないけどちょっと気になる、みたいな、そんなシチュエーションがあった。
「俺も好きだよ」
という、よく漫画でもあるようなそんなセリフで。
青春いいな〜と思う反面、そんな優しい声で、そんなセリフを言うやつはどんな人なのかと。
「ずっと好きなんだよね、俺」
俺、の言い方にピンときて。
靴箱へ向かって急いでいた足がぴたっと止まる。
木陰でさっきまで見えなかった背中がはっきり見えて、背番号10、に心臓がバクバクと激しく音を立てる。
『…な、にそれ、』
目黒蓮って、あんなに優しい顔して、女の子に好きっていうんだ。
あんなに優しい声で、あの子に好きって言ったの?
『っ、………』
目黒蓮が告白されるなんて、いつものこと。
そうだ、いつものことじゃないか。
何度言い聞かせても、何だか今回は耐えられそうにない。
なんで?理由は分からないけど、ちょっと切ない。
「遅いから迎えにきたよ」
目黒蓮と女の子から目が離せない状況でいると、後ろから綺麗な大きな手が伸びてきて、私の顔を覆う。
「Aちゃん、しょっぴーと違って顔小さすぎない?笑」
やば〜!とケラケラ笑うラウちゃんに救われた。
後輩に助けてもらうなんて…となりつつ、綺麗なその手を掴む。
『お兄ちゃんはローラーやりすぎて顔伸びちゃったの』
ラウ「そんなことある?うけるんだけど笑」
『………ありがと、』
私より数十cmも高いその人にお礼を伝える。
後輩なのにって思ってごめん、と心の中で謝罪する。
ラウ「俺今日映画みたいな〜」
『映画?何の?』
ラウ「んとね、これ!」
指紋や汚れが一つもついていない綺麗なスマホを見せられる。
『…蓮くんと行く約束してるやつ、』
ラウ「……ふーん。じゃあ、なし?」
ラウちゃんの言いたいことも何となく分かる。
さっきの状況で、今の状況。
すんなりOKと言えないのは、私がまだどこかで何かを期待してるから、かも。
ラウ「2回見ればいいじゃん。だめ?」
…後輩の頼みだし、何よりこの後輩に今日はたくさん助けてもらったから。
『ポップコーンはキャラメルだよ』
ラウ「ハーフ&ハーフにしよ!」
結局、この人懐こい笑顔にやられる自分はちょろいな。
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作者名:ぴよまる | 作成日時:2021年2月26日 12時