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All the beginning 3 ページ3

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「無事でよかったわぁ。
いやー別嬪さんやからすぐ見つかったな」


男はAの髪を優しく抄く。


その柔和な雰囲気にAもつられて泣き腫れた顔でくしゃりと笑って、また涙が溢れる。今度は安堵で溢れてくる涙であったかかった。





「お父さんもお母さんも、すごい心配してはったで」



「お母様…」



「すぐ会えるで。 ちゃんとごめんなさい言えるな?」




一人で探検して、迷子になった。

あれほど、一人でどこかへ行かないようにと言われていたのに。

母はすごく怒っているだろう。
母の怒鳴り声を思い出すとAはすぐには頷けなかった。


その様子を見て
男は一緒に謝ったるから、と抱き上げた。



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「……女の子が居た」
「ん?」
母の元へ向かう最中、涙を拭ったAは思い出したようにそう言った。




「あそこで。女の子が、檻に入って」
確かにあの檻の中には女の子が入っていた。
青い目をした、同じくらいの歳の女の子が


動物のように檻に入っていた。



「見間違えやろ」
「うんん、だって喋ったのよ」



男の歩みが少し早くなることに少女は気が付かない。


「あれ、なんで、隠れてって言ったのかしら」

「あれは誰だったのかしら」



ブツブツと呟きしきりに首を捻る腕の中のAを男は静かに見つめていた。


この子は、この先相応の教育を受け、相応の女性として育っていくだろう。

いつの日か、檻に入っている人間という意味を捉えるだろう。

そのいつの日かに、今日のことを覚えていたとしたら?
予感であればいいと願うが、それはあくまで希望的観測に過ぎない。
この世界での希望的観測は、命を掻っ攫われることに直結する。





「……あの、お母さま怒ってた?」



だが、今
この子は何の力も持たないただ腕の中に納まっているだけの小さな存在。



「どうやろなぁ〜」




【芽吹く前に潰しなさい】
かつて自分をそうした女の声が、幾度も幾度も脳裏をよぎった。

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みよ(プロフ) - ジョセフィーヌ・ハルオミさん» 大丈夫ですよー^^無理やりのキスも萌えますよ!!!(もしかしてハルオミさんと私だけの特別な性癖……)2章楽しみにしてます^^ (2017年1月13日 1時) (レス) id: 437f64176f (このIDを非表示/違反報告)
ジョセフィーヌ・ハルオミ(プロフ) - みよさん» 返信遅れてしまって申し訳ないです……。いいですよね!!私だけの性癖とかじゃないですよね!?中々惹かれる方いますよね!?って思いながら書いてました。笑二章もお付き合いいただけると嬉しです! (2017年1月12日 22時) (レス) id: 1a32b5f4a6 (このIDを非表示/違反報告)
みよ(プロフ) - ジョセフィーヌ・ハルオミさん» やっと一章終わりましたね!お疲れ様です^^いや、ですがあのキスもなかなか萌えます笑1人で「超いい……」とかやってましたもん笑笑幸せなキスも楽しみにしてますw (2017年1月7日 19時) (レス) id: 437f64176f (このIDを非表示/違反報告)
ジョセフィーヌ・ハルオミ(プロフ) - みよさん» ああああ!!ありがとうございます!!めちゃめちゃうれしいです!!キスまで長かったんですよ……しかも色々誤解を生むような……くそぅはよう幸せなキスしてくれや!と思いながら書いてます。笑今後ともよろしくお願いいたします! (2017年1月5日 22時) (レス) id: 1a32b5f4a6 (このIDを非表示/違反報告)
みよ(プロフ) - この話めっちゃ好きです!!頑張ってください!!!!キスまで長かったァ〜〜!!! (2017年1月5日 22時) (レス) id: 437f64176f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハナチル | 作成日時:2016年12月10日 22時

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