出来た子にはご褒美を【黄】

Secret thing 7 ページ27

Aのことだからまた何も考えずに飛び出してきたんだろう。

今頃家は突かれた蜂の巣のように大騒ぎだろう。




さて、どうしたものかと
泣き疲れて眠ったAの前髪を梳けば口元が何かを食べるように動く。



その様子に思わず頬が緩む。
指先を輪郭に沿って這わせれば白い肌が闇に溶けていきそうで




「無防備に寝るんやもんなぁ」



それだけ信用されていると言えば喜ばしいが



(あー……妹おったらこんな感じか)


家族はいないからそんな感情が浮かんでもそれが正しいのかわからないが。

.





ただ、無性に抱きしめたいとか、側にいたいと思う。





そういえば、サーカスを離れたことをAに話していない。
そして、ほんとにうにそろそろ帰さなければ。





.




返さなければ。







深呼吸し、笑みを作る。

呼吸と共に上下する肩にそっと触れた時だった。




―――――コンコン



自分のすべてが停止し、気配を潜める。
ここに来る人間など限られている。


【仲間】か【犬】か。

そして、前者に含まれるあの不謹慎な笑顔の男ならノックなどしない。



となれば。

Aへ息苦しくない程度に顔が隠れるところまで毛布を被せる。
外の気配に耳を澄ませ、体制を整えた時だった。







.



「居留守は感心しないぞ」






綺麗なBritish Englishが耳に届き、音に出さず舌打ちをする。




(このタイミングでか)





.






『淳太、開けんかボケ』








続いて聞こえた祖国の言葉に最終通告を突きつけられ


声に従ってドアノブを捻れば、能面のように眉一つ動かさず
薄汚れた服を着た男が立っていた。





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