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部屋に入った途端、どちらともなく深いキスが始まって、雪崩れるようにベッドで身体を重ねた。ハジメテの俺はそれを悟られないように必死に酔いを振り切って頭を働かせたけど、Aさんの乱れる姿が胸を昂らせて、途中から何も考えられなくなっていた
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朝日が眩しくて目が覚めた。どうか夢でありませんように、と強く抱きしめていたはずの彼女は腕の中に居なかった。ひとつ溜息を吐くと、部屋の向こうから音がして。慌てて落ちていた服を着てキッチンへ行けば、昨日と同じ服を綺麗に纏ったAさんが立っていた
『おはよう。…少し台所、借りてます』
「え、あ…はい、いくらでも、どうぞ」
昨夜の愛らしい彼女とは正反対の元通りの無表情。手際よく並べられていく朝食は1人分だけ。
『…ご迷惑をおかけしました。せめてもと作っただけです。口に合わなかったら捨ててください。では…』
早口で抑揚なく告げられて、玄関へ向かっていく彼女の腕を急いで掴む
「あの、」
『…なんですか?』
「好きです。………俺と、付き合ってください」
『………』
寝ぼけていた、と後から言い訳したくなるような間抜け面で、あんなに躊躇っていた押し付けの告白をしてしまった。それはもう二度と彼女が俺に関わらない為に、借りを返すための"朝食"だと察したから。そのつもりなら…俺が想いを叶えるチャンスは今しかないと反射的に思った。だが、Aさんの返事はその予想をさらに超えたものだった
『……いくら払えるの?』
俯いた彼女が沈黙の後にぼそり、と放った言葉に固まる俺
「…….え?」
『言っとくけど、好きって気持ちだけじゃ大人の恋愛はできないのよ?お金がないとデートのひとつもできやしない。それを分かっていってるのか?って聞いてるの』
動揺した俺を貫くような厳しい視線に、思わず唇を噛む
「……すいません…俺、年上の女性とお付き合いしたことなくて…」
『でしょうね。……ああ、これからも一晩寝るくらいは別にいいわよ?私の噂、知ってて抱いたんでしょう?まぁ、ラウール君は若くてカッコ良くて人気者なんだから、私なんか相手にしなくてもいいんでしょうけど……』
「………」
Aさんの蔑むような微笑みさえ憎めない。俺は馬鹿だ。彼女自身から金の亡者だと告げられたにも関わらず、それが叶えられない自分に失望している。俺に稼ぎがあれば…この目の前の冷血な美人を手に入れられるのに
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kae(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、有難いお言葉感謝です😭怪しい彼氏も読んでいただけたのですね!嬉しい…似ているなんて本当に光栄な限りです。はるのちゃんは永遠に憧れの存在です。好き同士だと似てくるんでしょうか?😂こちらこそ読んでくださってありがとうございます!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様〜!嬉しいコメントありがとうございます!実は私もまたさせていただけるなら…と期待しつつ🙏悪女について沢山の捉え方とストーリーをご提供できて楽しく書かせていただきました!ユッピン様の応援あってこそです。これからもよろしくお願いします! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、第1弾の方も読んで下さり有難うございます🙇ぜひ今後ともかえちゃん、そしてはるのの執筆活動を応援して頂けるとすごく嬉しいです☺️またお会いできますように…!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、こちらにも感想を送って下さり有難うございます🙇😂私もコラボを受け入れてくれたかえちゃんには本当に感謝しています😢読んで下さったユッピン様にも、勿論多大なる感謝です🙇いつも素敵なコメントを本当に有難うございます…! (2022年8月25日 22時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - 完結お疲れ様でした。怪しい彼氏に続いて今作も最高でした。共同制作なのに作風が似ていて、とても読みやすくて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました。今後もお二方の作品楽しみにしています! (2022年8月24日 15時) (レス) id: 990636348e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haruno x他1人 | 作成日時:2022年8月10日 21時