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会場からの帰り道。タクシーから眺める景色は、ビルの夜景が美しい
─── 素敵な女性に出会えて、俺は絵を描いてこれたんです。命を救われた、といっても過言じゃありません。
─── アトリエに、1枚だけ、前に居た方の絵があって。その女性を描いたみたいなんですけど……とても素晴らしい作品なんです。それに刺激を受けて俺も描いてみたんです。
Aが俺のような被害者を生み出していることを、彼に伝えるべきだったのに。それができなかったのは、命を懸けて残したあの絵が、まだ彼女の手元に残されているという希望を得たからだった
もしかしたら…俺を愛するが為の行動だったのではないか。いわゆる独占欲のようなもので、俺を縛り付けたかったのではないか。
決して確かめることはできないその答え。俺が再会を望むことはない。ただ単に非道な女性であったとして……もしくは彼女は俺を愛していたからこそ、手放したのだとしたら尚更。
でも、今でも忘れられないAとの幸せの日々。あれが本物だとすれば、全てが救われた気がした
「………そうやったら、ええなぁ……」
明日は久しぶりに両親の似顔絵でも描いてみようか。しばらく感じていなかった意欲が、少しだけ湧いてきた
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『また探さなくっちゃ……面倒だわ』
先程、嬉々として飛び込んできた青年は男達に取り押さえられて、部屋を出ていった。アトリエに残された彼女は、淡々と片付けを始める。そこに何も痕跡を残さないように
『……羽の生えた鳥は、煩いだけなのに』
燃え盛る暖炉の前。ソファーに腰掛けた彼女の前には、先ほどの男が残した、いくつもの絵が並んでいる
『……どいつもこいつも、同じね。全く。結局は世の中の賞賛を欲しがるなんて』
ひとつずつ、それを手にとって。少しの間眺めた後、まるで投げ捨てるかのように炎の中へ放り投げていく
そして最後に。手にとった人物画を見て、彼女は呟いた
『あら?これだけ作風が違うわね………
………" K.M "………
……………誰かしら?』
無慈悲に投げ込まれた絵の裏の文字が
火に照らされて、灰となっていく
──── Aへ、心を込めて
──── 貴女を愛する、K.M より
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kae(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、有難いお言葉感謝です😭怪しい彼氏も読んでいただけたのですね!嬉しい…似ているなんて本当に光栄な限りです。はるのちゃんは永遠に憧れの存在です。好き同士だと似てくるんでしょうか?😂こちらこそ読んでくださってありがとうございます!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様〜!嬉しいコメントありがとうございます!実は私もまたさせていただけるなら…と期待しつつ🙏悪女について沢山の捉え方とストーリーをご提供できて楽しく書かせていただきました!ユッピン様の応援あってこそです。これからもよろしくお願いします! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、第1弾の方も読んで下さり有難うございます🙇ぜひ今後ともかえちゃん、そしてはるのの執筆活動を応援して頂けるとすごく嬉しいです☺️またお会いできますように…!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、こちらにも感想を送って下さり有難うございます🙇😂私もコラボを受け入れてくれたかえちゃんには本当に感謝しています😢読んで下さったユッピン様にも、勿論多大なる感謝です🙇いつも素敵なコメントを本当に有難うございます…! (2022年8月25日 22時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - 完結お疲れ様でした。怪しい彼氏に続いて今作も最高でした。共同制作なのに作風が似ていて、とても読みやすくて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました。今後もお二方の作品楽しみにしています! (2022年8月24日 15時) (レス) id: 990636348e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haruno x他1人 | 作成日時:2022年8月10日 21時