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閉園時間まで遊んで
遊び疲れたAさんは気持ちよさそうに眠っていた。
起きたら約束のファミレスまで移動して
パフェ食うって言ったくせに肉もしっかり頼んで。
俺はそれに呆れ笑いして。
「さすが鉄の胃袋、」
「だって美味しそうすぎるんだもん」
肉の一口めからパフェのグラスの最下層まで余さず食べた彼女が満足そうに腹をさする。
思えば俺らはこのファミレスで長い時間を過ごした。
夜勤明けが1番多くて、
その次は夜勤前だった。彼女が家に帰りたくないと言った時はとにかくずっと一緒に居た。
俺に見せていた顔も言葉も全部嘘だったとしても
守りたかった。
離したく、なかった。
「………許せないって、思ってた」
会話の中の何気ない一瞬の沈黙の後に口をついて
止められなかった。
「許そうと思った。
嘘をつかれてても本当に全部許せるって思った。
……、
全部捨てて俺のところに来てくれるなら、
ああ、そんなの全然許せるって俺、思ってたよ」
彼女の目が一気に潤んでいく。
最終的に俺を捨てて夫を選んだ人が「ごめんなさい」と呟いて唇を噛んだ。
謝罪はいらなかった。
俺がただずっと欲しかったのは
俺がずっと彼女の隣に居ても良い未来。
居心地の良い関係だった、
それがただ1度触れてしまったせいでもう止められなくなって、全部を捨ててでもAさんの全部を欲しくなった。
勝手に拐っといてあまりに勝手だけど
こんな遠くに来てから2人のこれからを決めさせるなんてあまりに酷いけど
もう 色々と酷いのはおあいこだろ?
「全部Aさんのせいだよ。
Aさんのせいで俺はもう引き返せなくなった」
頷いて、静かに泣いた彼女の涙を拭った。
もうその心が何処にあるのかも俺は分かっていた。
痴話喧嘩に見られても構わない。
昼が下がって夕方になって、やがて夜を迎えても
構いもせずに同じ席に座ったまま
ついには伝票の取り合いさえも始まらなかった。
.
いつのまにか眠ってしまっていた俺を店員さんが起こしてくれた。
そこには彼女の姿も、卓上の伝票ももう無い。
ただ“ 幸せに ”の言葉だけを残して。
それが、俺と彼女の旅の終わり。
End.
『花狂いとカタストロフィ』/ 07【叙情とランデブー】より
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kae(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、有難いお言葉感謝です😭怪しい彼氏も読んでいただけたのですね!嬉しい…似ているなんて本当に光栄な限りです。はるのちゃんは永遠に憧れの存在です。好き同士だと似てくるんでしょうか?😂こちらこそ読んでくださってありがとうございます!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様〜!嬉しいコメントありがとうございます!実は私もまたさせていただけるなら…と期待しつつ🙏悪女について沢山の捉え方とストーリーをご提供できて楽しく書かせていただきました!ユッピン様の応援あってこそです。これからもよろしくお願いします! (2022年8月25日 23時) (レス) id: ae2feaf230 (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - 紫陽花さん» 紫陽花様、第1弾の方も読んで下さり有難うございます🙇ぜひ今後ともかえちゃん、そしてはるのの執筆活動を応援して頂けるとすごく嬉しいです☺️またお会いできますように…!! (2022年8月25日 23時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
Haruno(プロフ) - ユッピンさん» ユッピン様、こちらにも感想を送って下さり有難うございます🙇😂私もコラボを受け入れてくれたかえちゃんには本当に感謝しています😢読んで下さったユッピン様にも、勿論多大なる感謝です🙇いつも素敵なコメントを本当に有難うございます…! (2022年8月25日 22時) (レス) id: dbb7f3d4be (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - 完結お疲れ様でした。怪しい彼氏に続いて今作も最高でした。共同制作なのに作風が似ていて、とても読みやすくて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました。今後もお二方の作品楽しみにしています! (2022年8月24日 15時) (レス) id: 990636348e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haruno x他1人 | 作成日時:2022年8月10日 21時