天涯の巫女と付喪神様 二

37話 ページ47

なかなか話を切り出さない大将
大将の事だ
言わなきゃ、言わなきゃって
そう思ってるんだろう
目覚めた大将が、どうやって
こっちへ戻ってきたかの言葉なんて
誰でもわかる《嘘》

でも、その《嘘》に
騙されようと
だから、鶯丸の旦那があぁ言った
言いたく無いことが
あるから
追求しようとすれば
また、はぐらかすってわかってるから







『あのね、薬研‥』

「たいーしょ」

『にゃぅ‥！？』

「さっきも言ったろ？
言いたく無い事は言わなくていいって
大将が話せる時に
話してくれって」

『(こくこく)』








俺は大将の両頬をむにっと挟み言う
柔らかいな、大将の頬
そんな事思いながら
もちもちしてみる
うぅ‥やへん‥らめてぇと言う

‥可愛い。

俺の手首を掴む両手
悪い悪いと笑って離した

さぁもう部屋に戻ろうぜ
差し出した手、大将は
少し控えめに添えてきた
強く握り返し引いてあげる







『薬研、ありがとう』

「ん」







部屋へ戻り大将が寝付くまで
そばにいる事にした
布団から半分、顔を出してる大将に
なんだ？まだ寝れないのか？と
問いかければ
首を横に振れば、おやすみと
言われ、おやすみと返した
枕元の小さな灯籠の火を消す前に
大将へ視線をやった

そっと口元に耳をもっていけば寝息

もう少しいるか
そう思い、畳の上隣へ横になる
小さな寝息が律動していた

今、思えば随分と丸くなったもんだな
俺っちも‥


―お前、俺っちの兄弟を何だと思ってやがる！？
彼奴らはお前の玩具じゃねぇんだよ！！―
―‥‥‥―

―返せよ！俺の兄弟！返せよ‥！！―
―‥‥‥―









「‥‥‥‥‥」

『‥や、げん‥』

「大将？」

『‥‥‥‥』

「って、寝言かよ

おやすみ、大将
いい夢を」








眠ってる大将の額に唇を落とし
灯籠の火を消した

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