天涯の巫女と付喪神様 二

5話 翡翠の彼 ページ6

心臓が止まるかと思った
病弱な私には止めの一撃のようだ
夢で見た彼
『存在否定』『必要とされず』
自分がここにいないかのように
ぞんざいにされた彼
でも、彼から感じるのは
《怒り》《憎しみ》ではなかった
私が見えたのは
その翡翠の瞳は《哀しみ》《憂い》を纏う
彼は、この日記を書いた彼女を
今でも思うからこそ
彼女がいたこの場所に

ブラック本丸が危ない所だなんて
そんなの嘘
彼のように彼女を思う優しい心を
持った刀剣様もいるのだから
彼がそうでしょ？

私は日記を見つめた
この日記に書かれていたのは
彼女の《葛藤》《苦悩》そして…《懺悔》

ー演練に行けば自慢される
最初はだから何？と思っていた
私には《必要ない》のだから
だけどね、日に日に強くなる欲は
止まらなくなる…

大好きな人達がいて素敵でしょ…

いつからだろう…物足りないと感じ
欲を出しお願いして出陣させたのは

ごめんね…ー

ー初めて手を出してしまった
大切な五虎ちゃん…感情が抑えられなかった
それは私の弱さ
求めれば求めるほど、輝きを増し
それが誘導する…

国広に言われた
『俺たちじゃ満足出来ないのか？
どうして他と同じように
求めようとする？
俺たちとあいつら何が違う？
見た目か？強さか？価値か？

お前はそのような事で
決める奴じゃないだろう』と

心が痛かった…
でも、私の口が言ってしまったのー





「所詮、偽物の俺は本物にはなれない…

『偽物のくせに偉そうなこと言わないで
本物にもなれないくせに
所詮あんたは偽物止まり
傑作でもなんでもないのよ』

あいつが俺に言った言葉だ」

『…………』






ーどうしよ…国広を傷つけてしまった
明日、謝らなくちゃ
ごめんね、国広は国広だよねって
私の本物は国広だけだよって
貴方の代わりは誰もいないんだよって

大丈夫、明日になれば
きっとまた…元に戻れるよね

大好きな人達がいて素敵な毎日にー

6話 欲望は心を喰らう→←4話 過去の日を記した本

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す