天涯の巫女と付喪神様

22話 薬研藤四郎 ページ22

「薬研に手当てしてもらったらどうだ？」




鶴丸さんの提案に
私達は薬研様がいるお部屋へ
一期様は渋っていたが
髭切様の威圧……笑顔に耐えきれず
案内して頂ける事に
静かな本丸、廊下を歩き
ひとつ部屋の前に止まる
一期様が私を見つめてきた

薬研に何かすれば
私が許しません
そう言った一期様に
おいおい、桔梗がすると思うか？
鶴丸さんが
一期様の肩に手を回し言う
人間の毒に侵された
鶴丸殿のお言葉なんて
信用しませんよ
ふいと顔を背けた一期様に
君なぁ…と睨んでいた
そんな2人にクスッと笑う

そんな私に
一つは冷めた目
もう一つは何笑ってる？と
言葉付きの呆れた目




「いえ、仲がいいなぁと思いまして」

「誰がこんな人と！」

「おい、一期
俺をこんな人呼ばりするな」

「貴方はこんな人で充分ですよ」

「皇室では仲良くしてただろう」

「あの時の私は
どうかしてたのですよ！」

「頭が？」

「違いますよ！」

「相変わらず冗談が通じないんだな、一期」

「〜っ！
そういう所が嫌いです！」

「はいはい、褒め言葉で受け取っておく」

「仲良いみたいだね」

「そうだな、兄者
ま、俺と兄者程ではないがな」

「君はただのぶらこんだろう」

「ぶら…！？」

「ははは、良きかな、ぶらこん」

「ぶらこん万歳」

「兄者！」




ため息を吐いた一期様
ゆっくりと開けた障子
中には
黒髪の男の子
こちらに目をやれば
私を見て目を見開いた
私もその子を見つめる

この子…見たことある
そんな気がした
それも遠い昔じゃなくて
近い記憶
………あ、この子
私を襲った子だ

頭がそう理解した
だから、あの子は私を見て
驚いてるのか

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