アルカリ性のなみだ2

55話 ページ12

『今更、達央が好きなんて言わないでね』









いつか聞いた真守の言葉を思い出した。









達央「A？」









私の手を優しく握ったまま









少し早歩きで前を歩く達央が









突然足を止めた私を見つめた。









A「...」









そんなの分かってる。









達央を捨てたのも









真守を選んだのも








全部私なのはもう分かってる。









何度も何度も自分に言い聞かせた









『私は真守が好きなの。』









達央「具合悪い？」









達央も足を止めて、私の顔を覗き込んだ。









そんな仕草にもときめいちゃって









顔に熱が篭った。









A「ごめん。ちょっと疲れちゃって...」









この数カ月ですっかり私も嘘がうまくなった。









髪型も性格も変わって









もう達央と居た頃の面影なんてない。









それなのに優しくしてくれる達央があまりにも愛しくて、









切なくて。









達央「じゃあ、ちょっと休憩するか」









私のを優しく引くその手で分かるくらい









達央は前よりずっと痩せてた。









A「うん...」









ゆっくりと私のペースに合わせて、








隣を歩く達央。









その横顔は少し寂しげで、






でもどこか嬉しそうで。









達央「ごめん。」









突然、視界が暗くなったかと思えば









体がじんわりと暖かくなっていった。









A「っ...！」









私に優しくなんてしないで。









私は貴方に









何一つ返せないのに。









A「私もごめん...っ...」









君にこの言葉が君に届いてたかは分からないけど









私を抱きしめるその腕に









ギュッと力がこもったのは分かった。









『ごめんね。』









どっちにこの言葉を送ればいいんだろう？

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