17 ページ18
侑李side
今日も調子は悪かった。
朝からご飯を吐いてしまうし、呼吸は苦しくて酸素マスクは取れないし、心臓のドキドキも止まらなくて指についた装置も外されぬまま。
そんな中、検診に訪れた薮ちゃんがしゃがんで僕を見るとそっと装置の数字を見つめてメモを取っていた。
この装置はパルスオキシメーターと言うらしい。
「もうちょっと安定したらみんなのいるお部屋に移ろっか。」
「もうちょっとって、どれくらい?」
「侑李の心臓がドキドキするのが治るまで。お薬も今までのと変えてみるから少しでもおかしいなって思ったら遠慮しないでナースコール推してね。」
「痛いことするの?」
「点滴だけはチックンってするかなぁ。でも前みたいに喉にカメラ入れたり、管を胸のところに入れたりはしないから安心して。」
「……うん、」
「まだちょっと不安?」
「だって、お胸痛くなったら、すごく辛いもん……」
「そうだね。痛いのは辛いよね。でもこれからいろんなお薬試してみて侑李に一番効くものを探してみるから少しだけ頑張ろう?侑李に合うお薬見つかったら痛くなる回数もうんと減るから」
「ほんと…?」
「ああ。ほんとだよ。」
薮side
不安がる侑李の地雷を踏まぬよう、話を聞きながら治療方針も伝える。
大ちゃんの言うようにやはり彼は戦意喪失しているのだ。何か目標ができればいいけれど。
「そうだ。今度院内学級でお遊戯会やるの知ってる?」
「……うん。でも僕いつも行かせてくれないもん、はしゃいだら発作が出るからって、」
「そうだね、確かにあんまりはしゃぐのは良くないけど、侑李の具合が良かったらすこしだけ顔出してみない?みんなも侑李が来たら喜ぶと思うな〜」
「……行っていいの……?」
「うん。いけそうだったら俺が一緒に着いてくから。」
「…そっか」
「うれしくない?」
「うれしい、」
へらり、小さく侑李が笑った気がして俺もつられるように微笑んだ。
可愛らしいこの笑顔を守ってやりたい。
命が尽きるまで全力で支えてやりたいんだ。
225人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
新道踏切(プロフ) - 面白くて一気読みしてしまいました!またの更新待っています(*^^*) (2020年12月4日 16時) (レス) id: 7158c48a17 (このIDを非表示/違反報告)
ちる - すごくいい話ですね!期待してます! (2020年3月8日 0時) (レス) id: 86380dcbb6 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - ちねんさんのお話を検索してこちらの小説を見つけました。続きを楽しみにしています! (2020年3月2日 16時) (レス) id: cf2ae7ce49 (このIDを非表示/違反報告)
はなん(プロフ) - 面白いお話ありがとうございます 続きを楽しみにしています! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 039a9f3787 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱむこ | 作成日時:2020年2月20日 21時