＊＊ ページ38
しばらくの間、静かな教室に私の鼻をすする音が小さく響いていた。
やがてその音は止んでいった。
「……ありがとう、もう、大丈夫」
小さく、彼だけに聞こえるように言った。
「……そうか」
私の涙を隠していた彼の体が、私の頭をひと撫でしてから離れていく。
彼は窓際に立ち、なおも私達を見守る夕陽を見つめて言った。
「……ごめん、君を泣かせるつもりはなかったんだ」
「ううん、私が勝手に泣いただけだから」
「でも、君を泣かせた原因を作ったのは僕のせいだ。……ごめん」
私からは彼の背だけが見える。
しかし、その背から反省しているのが目に見えた。
反省する必要などないのだけれど。
「大丈夫」
私はそれだけ言った。
「それと……ありがとう。君に言われて分かったよ。僕は音楽を諦められないんだってね。いや、諦めなくても良いって。……不幸になる期待は要らないか……。フッ……君のいる今ならそう思えるよ。一人で背負っていたら、その考えにはたどり着けなかっただろう」
彼は優しく、私を顧みた。
「君は悪魔なんかじゃなく、本当の
それは彼の本当の笑顔だった。
「ふふ、何言ってるの？私は天使じゃないよ。というか、荒野君一人称ブレブレだよ！本当の荒野君は僕って言ってるの？」
「なっ！！ち、違っ！ミ、meは……」
「ふふふ！よかった……本当、言ってよかった」
一気に安心して変なこと言っちゃった。
でも、本当によかった。
ずずいと彼に近づき、
私は彼の手を勢いよく取って、気持ちが伝わるように目を合わせた。
「これから頑張ろうね！私、どこまでも一緒にいるから！安心して！」
すると、彼はびっくりした様子で顔を赤くした。
「あ、あぁ……Thank you……」
少し、繋いだ手が熱い。
「まずは……」
少し、知らないフリをした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき猫(プロフ) - ここさん» 閲覧頂きありがとうございます！お待ちいただけると幸いです！ (2023年2月1日 23時) (
レス) id: a93230bf5d (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - ゆき猫さん» 見ました〜！！何回見てもドキドキします＞_＜気長に待ってます！！ (2023年2月1日 17時) (レス) id: 977f95a8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき猫(プロフ) - ここさん» 応援ありがとうございます！番外編2も投稿してありますので良かったら！ブルームーン編も鋭意制作中ですのでもう少々お待ちください！ (2023年1月30日 17時) (レス) id: a93230bf5d (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - めちゃくちゃ好きです、、😖💕続き待ってます🙏🙏 (2023年1月28日 18時) (レス) id: 977f95a8e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき猫(プロフ) - 和鼠さん» ありがとうございます！お待ちしていますね！ (2023年1月2日 8時) (レス) id: a93230bf5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき猫 | 作成日時：2022年8月3日 21時
