夏の魔法 (ページ9)

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9話ページ9

斗亜 side

斗亜の知っとるAは、頭が良くて、運動ができて、誰にでも優しくて、一言で言うと、できすぎた人間やった。

ほんでも、最初っからそうやったわけやなくて、転校してきた初日は誰とも喋っとらんかった。

けど、Aから放たれる雰囲気に斗亜はめちゃめちゃ惹かれたんよ。

それをきっかけに話しかけて、話してみたらめちゃめちゃ良い奴で風雅とか琉巧、他のみんなにも仲良うなって欲しくて紹介した。

Aがみんなと打ち解けるのは早かった。その分斗亜も嬉しかった。

Aの過去は話で聞いたよりも、もっと胸を締め付けられるような事ばっかりやった。

5歳で両親を亡くし、仲のいい親戚がおらず、親戚の家をタライ回しにされた後に引き取られた孤児院。

中3の夏にAは1度自分を傷つけた。

そのタイミングで斗亜がAの立場になった。

確かにAは左手首のリストバンドだけは外さんかった。

『ごめんっ、ごめんっ！！俺のせいで斗亜がっ…』

斗亜「謝らんといて？斗亜な、Aの過去が詳しくしてれ嬉しかったで？まぁ、他人に勝手に過去知られるんは嫌やと思うけど…」

『俺、やっぱ斗亜がおらんと嫌や。うっとうしいとか、思ってもないこと言ってごめん！！』

斗亜「斗亜もAがおらなつまらんわ。」

A side

俺は孤児院を後にした。

家に帰ってベッドに倒れ込んだ。

『元に戻ってくれっ…頼むっ！！』

そう思いながら眠りについた。