第105話 ページ10
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しかし、絳攸はその事実を認めたくなかった。
どう考えてもおかしいだろうが。
この私が見取り図通りに歩いてなんで迷う。
この地図、間違ってるんじゃないか。
絳攸は自分が絶望的な方向音痴だということを決して認めなかった。
そんなことは十六歳で状元及第して最短距離の出世街道を突っ走ってきた彼の誇りが許さなかった。
勿論、絳攸は自分に非があるときや、誤りは潔く認める性格だ。
しかし、こればかりは例外だった。
楸瑛にさんざんバカにされた(と絳攸は思っている)ことと、自分の想い人であるAに醜態を見せたくないということが原因かもしれない。
回廊をそぞろ歩く女官や侍官は、朝廷随一の才人と誉れ高い絳攸と知り、羨望の視線を投げかけてくる。
……彼の自尊心にかけても道など訊けなかった。
そして絳攸は堂々と歩き出した。
まるで俺の行く手を誰も遮ってくれるなと言わんばかりに。
そして誰もがその通り、一切邪魔をしてくれなかったために、彼は更に迷うことになった。
そして一刻後。
絳攸は自尊心を捨てるか、遭難死を遂げるか、究極の選択を迫られていた。
もはや自力で外朝に戻ることは不可能であった。
絳攸の怒りはすでに頂点に達していた。
____ここはなんだ、いったいこんなに多くの部屋を誰が使うっていうんだ。
材木のムダだ。
人件費もムダだ。
俺が万一後宮管轄の内侍省に飛ばされることがあったら、絶対に即半分叩き壊して薪にして国中に無料配布してやる。
絶対だ。
……しかもなんで誰も歩いてないんだ
後宮の(多分)最奥だからといって、誰もいないなんてことがあっていいのか。
職務怠慢だ。
ついさっき人件費のムダと怒っていたことは忘れて、絳攸は理不尽にも腹を立てた。
ふと、足を止める。
どこかから声が聞こえた気がした。
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咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2021年4月30日 0時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - ラフェルさん、ありがとうございます!!更新できなくてすみません。時間が無かったり、学生として忙しかったりするので、なかなか出来ていないのが現状です。申し訳ありません!出来るだけ頑張ります。 (2020年6月22日 14時) (レス) id: 81545e79a5 (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - すみません、分かりにくかったでしょうか?オチは決まっているので、お話が進むのをもう少し待っていただけると嬉しいです (2019年6月1日 8時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - オチは決まってるんでしょうか?なんだか先が見えなくてモヤモヤします。 (2019年6月1日 7時) (レス) id: e7610b422d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年4月20日 16時