第119話 ページ24
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
その頃、劉輝は仙洞省に来ていた。
宮城のはずれにあるそれは、いかにも風雅な数層の高楼だった。
しかし誰も中に入ることはできないとされている。
別に鍵がかかっているわけでもないのに、なぜか開かないのだ。
宝物がおさまっていると信じて過去幾多の盗賊が忍び込もうとして叶わず、ただ人には扉を閉ざす。
彩八仙しか入ることはできないと言われているゆえんである。
しかし、この日の仙洞省はいつもと様子が違った。
いつもはしっかり閉じられているはずの扉が、少しだけ開いていたのである。
劉輝は唇を引き結んだ。
____矢文の指示が正しければ、あの中に秀麗がいるのだ。
そして、Aも。
____ごめんなさい。
思い出すのは彼女の泣きそうな表情。
そんな表情は絶対にさせたくなかったのに、させてしまったのは、自分のせいなのだろう。
もう一度。
もう一度、
____劉輝っ!
あの笑顔が見たい。
剣の柄を握り直し、きぃ、と半開きの扉を開ける。
中は真っ暗で、物音一つしない。
足が____すくんだ。
夜を一人で過ごすことのできない劉輝にとって、真の暗闇で一人きりになるのは、耐え難い恐怖だった。
それは昔の____辛い記憶を引きずり出すから。
けれど。
もう一度ぐっと柄を握りしめる。
劉輝の顔つきが変わった。
____なんのために、ここへきた
劉輝は息を吸うと、中に入った。
反射的に彼は剣を抜いていた。
金属音が鳴り響く。
闇に火花が散り、まさか受け止めるとは思っていなかったらしい相手の動揺が、剣を通して伝わってきた。
その隙をついて剣を払う。
猛将、宗太傅に叩き込まれた剣術は、まさに実戦で戦うことを前提としたものだった。
一撃で相手の急所をつき、確実に絶命させる。
それを骨の髄まで叩き込まれた彼の剣は、鋭く相手の喉笛を切り裂いていた。
____まず、一人。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
160人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2021年4月30日 0時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - ラフェルさん、ありがとうございます!!更新できなくてすみません。時間が無かったり、学生として忙しかったりするので、なかなか出来ていないのが現状です。申し訳ありません!出来るだけ頑張ります。 (2020年6月22日 14時) (レス) id: 81545e79a5 (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - すみません、分かりにくかったでしょうか?オチは決まっているので、お話が進むのをもう少し待っていただけると嬉しいです (2019年6月1日 8時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - オチは決まってるんでしょうか?なんだか先が見えなくてモヤモヤします。 (2019年6月1日 7時) (レス) id: e7610b422d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フローラ | 作成日時:2019年4月20日 16時