第113話 ページ18
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静「……あなたも、太保の地位までのぼった」
茶「私は凡人ですよ。人の三倍努力して、死ぬ気で這い上がってここまできたんです。出世や、名誉や、地位や、権力や____そういったものを糧として」
茶「凡人の中でも俗物ですな。けれど霄は違った。彼はそんなものにまるで興味を示さなかった」
茶「それがフリならまだ救いもありました。けれどあれは本気で、ただ陛下のためだけに尽くしていた」
茶「そしていつも私の上にいた。涼しい顔をしてね」
茶「私には理解出来なかった。あらゆる権力を握れる能力があるのに、頼みにする家もないのに、あれは何にも執着しなかった」
茶「まるで自分という存在一つありさえすればいいと。____そしてね、それは事実だったんです」
茶「だからこそ私は霄を憎んだ。私のように何かに拠って立たなければ胸もはれないような凡人との違いを、まざまざと見せつけられて」
静蘭は話を遮ることが出来なかった。
静蘭の人生など、茶太保の生きてきた年月と比べればはるかに短い。
____何を、言うことができよう。
茶「____凡人は、天才に憧れるものです。けれど手の届く先にいる天才など、紙一重の俗物にとっては憎しみの対象にしかなりません」
茶「私は霄のようにはなれない。あの男を手放しで賞賛し、従うことなどできない。そのようなことをしたら、私の今までの人生はどうなりますか」
茶「私は自分の生き方を後悔してはいない。望むものがあり、そのために生き、努力し、掴んできた」
茶「這い上がり、他人を追い越し、今まで上にいて私を見下ろしていた輩を見返すのは楽しかった」
茶「望んだこともほぼ叶いました。____けれど、たった一つだけ残っているんです」
茶太保は振り返り、真っ直ぐに静蘭を見た。
まるで突きつけられた剣など無いかのように。
茶「____霄の上に」
香の微かな匂いが、増した気がした。
芳香が鼻をついて、目眩がする。
ぐっと、剣を握り直した。
彼が本当にただの俗物なら、静蘭もそんな言葉など冷ややかに切って捨てたろう。
けれど彼の言葉には力があった。
己を知る者の、それは圧倒的な存在感。
茶「霄の上に。____今の望みはそれだけです。あれがどう動くのか____私は彼を追い落とせるのか。それとも____」
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咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2021年4月30日 0時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - ラフェルさん、ありがとうございます!!更新できなくてすみません。時間が無かったり、学生として忙しかったりするので、なかなか出来ていないのが現状です。申し訳ありません!出来るだけ頑張ります。 (2020年6月22日 14時) (レス) id: 81545e79a5 (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - すみません、分かりにくかったでしょうか?オチは決まっているので、お話が進むのをもう少し待っていただけると嬉しいです (2019年6月1日 8時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - オチは決まってるんでしょうか?なんだか先が見えなくてモヤモヤします。 (2019年6月1日 7時) (レス) id: e7610b422d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年4月20日 16時