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第112話 ページ17

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かすかな香の匂いが漂うその部屋は、廃墟のように仕立てられた外観に反して、こぢんまりとしながらもかなり趣味のよい家具で整えられていた。



けれど静蘭の冷ややかな目に映っていたのは調度などではなく、目の前の人物だけだった。





「お久しぶりです、と言うべきですかな。____清苑公子」





その男





____茶太保はいつもと変わらぬ好々爺の笑みを浮かべた。





静「お嬢様と、A様は、どこだ」





静蘭は相手の首筋に剣を突きつける。



けれど茶太保の笑みは変わらなかった。





茶「……お話だけでも、聞いてはいただけないのですかな?」



静「何を聞くと?私は、あなたの求める者ではない」





茶太保は喉の奥で笑った。





茶「あなたを見ていると、遥か昔を思い出しますよ、清苑公子」





首筋に剣を突きつけられたまま、それでも茶太保は平然と話を続けた。





茶「あなたのお父上にお仕えしていた頃は、戦火の絶えぬ時代でありました」



茶「時代の変わり目____だったのでしょうな。霄や宋とともに戦場を駆け抜け、陛下のあとに従い、私はがむしゃらに上を目指していたものです」



茶「八家の中でも格下の茶家からのし上がってやろうと、ただそれだけを考えて、先王陛下にお仕えしておりました」



静「……あなたは、それを成し遂げた。その地位も、権力も揺るぎなく、太保という朝廷百官の長の一人にまでのぼった」



静「……なぜ、今さらこんなことをする必要がある?」



茶「賭けをしているのですよ」



静「……賭け?」





思いもよらぬ言葉に、静蘭は瞠目した。



茶太保は淡々と語った。





茶「八家の誰よりも上に____そう思っていた頃はよかった。けれど、私は気づいてしまったんです」



茶「一番上には決して上がらないことに。紅藍両家を顎で使えるようになっても、陛下の右腕はいつも霄だった」



茶「私の上にはいつだってあの男がいた。そう____いつだって」





言葉とは違い、茶太保の声はひどく落ち着いていた。





茶「先王陛下の実力主義は徹底しておりました。ですから、私が霄の上に行くことはなかった」



茶「私がどれほど努力しても、霄はあっさりとそれを超えてしまう」



茶「天才____というのでしょうね。忌々しいものです。凡人の努力を嘲笑うかのような」





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咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2021年4月30日 0時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - ラフェルさん、ありがとうございます!!更新できなくてすみません。時間が無かったり、学生として忙しかったりするので、なかなか出来ていないのが現状です。申し訳ありません!出来るだけ頑張ります。 (2020年6月22日 14時) (レス) id: 81545e79a5 (このIDを非表示/違反報告)
フローラ(プロフ) - すみません、分かりにくかったでしょうか?オチは決まっているので、お話が進むのをもう少し待っていただけると嬉しいです (2019年6月1日 8時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - オチは決まってるんでしょうか?なんだか先が見えなくてモヤモヤします。 (2019年6月1日 7時) (レス) id: e7610b422d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フローラ | 作成日時:2019年4月20日 16時

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