第44話 ページ47
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秀「そうそう、仙洞宮、見たかったし。いつか絶対宮城にあがるんだ、っ…て____……」
国試を受けられないとわかってから、秀麗は無償で塾を開いた。
自分が駄目なら、子供たちに夢を託そうと。
いつか王を支えるような官吏が出たらいい____そう思って。
静蘭はそっと秀麗を抱き寄せた。
秀麗は歯を食いしばって静蘭にしがみついた。
静「……お嬢様……よく、頑張りましたね」
ぽろぽろと秀麗の頬を涙が伝う。
声なく秀麗は泣いた。
____八年前。それは遥かな昔のように思える。
けれど、秀麗にとってはいまだ昨日のことのように思い出せる悪夢だった。
幼い彼女の心に刻みつけられた傷跡は、決して浅くはない。
春のこない庭院を見て、今も秀麗は夜中にこっそり泣く。
そのことを静蘭は知っている。
八年という月日がたって、ようやく秀麗は笑えるようになった。
何でもない『ふり』をして過去を振り返ることもできるようになった。
だが、あの悪夢の記憶を掘り起こすのに、どれだけの勇気が必要だったろう。
泣かずに話すために、どれだけの力が必要だったろう。
静蘭はそっと秀麗の拳を開かせた。
指に触れるのは滲んだ血。
渾身をこめて拳を握りしめ、爪が掌を食い破っても____秀麗は話した。
全ては王のために。
お金のためではない、本当はもっとずっと大切なもののために、秀麗は後宮入りを決めたのだ。
かつて失ってしまった大切なものを、もう二度と失うことのないように。
嗚咽を漏らす秀麗の背を、静蘭は黙って撫で続けた。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時