検索窓
今日:6 hit、昨日:10 hit、合計:112,764 hit

第38話 ページ41

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜





秀「ほとんどの貴族は皆門戸を閉じて、固い扉の外には餓死者が転がった」



秀「たまに降る雨水を飲めるように私と父様と私で一生懸命濾過して」



秀「毎日三人で街中を走り回った。静蘭は力仕事に。父様は作物の確保に。私は診療所の手伝いに____」





日に何度も気を失いそうになるのを必死に我慢して。



力が入らず震える腕で、葬送の二胡を数え切れないくらい弾いた。



ついには涙さえ涸れ果てて、瞬き一つで力が抜けた。



死ぬために生きているような気がした。



何のために、こんな思いをしてまで生きているのか。



分からなかった。



それでも、大切な二人が笑ってくれるなら秀麗も笑えた。



ないも同然の食材を工夫してご飯をつくって、小さな花を飾って、洗濯も掃除も、服の繕いものも一生懸命やった。



疲れて帰ってきた二人のために毎晩二胡を弾いた。



できることなら、なんでもした。





____日に日に痩せ細っていく二人を見て、毎日恐怖に怯えていた。





置いていかないで。



一人にしないで。



ただそれだけを祈っていた。





秀「いつか父様も静蘭も死んでしまうんじゃないかって思った」



秀「朝起きたら、二人とも冷たくなってるんじゃないかって」



秀「二人が死んでひとりぼっちになる夢を、毎晩見た。置いてかれるなら、先に死にたいと思った」



秀「眠ることも、起きることも怖かった。気が狂いそうだった……」





置いて、いかないで____





その言葉に、男の顔がわずかに歪む。



胸の痛みとともに、遥か昔がよみがえる。



かつて彼も、毎晩のようにその言葉を呟いていたときがあった。



いかないで____一人にしないで。



男のその表情に気づいたAが、安心させるように男の手を握る。



それに気づいた男はAの手をより強く握った。





秀「あれは、恐怖の毎日だったわねぇ」





明るい声に、男は我に返った。



知らず額に浮かんだ汗を拭う。





____いまだ、二人の手は繋がれたまま。





秀麗は体を起こした。



隣を座る男に、にっこりと笑いかける。





秀「____だから、私は、王宮にきたの」



「え?」



秀「あんな日々はもうごめんよ。だから霄太師の請を受けて、私はここへきたの」





ひらりと舞い散る桜。



それは象徴。



哀しみと、涙と、____平和の。





〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

第39話→←第37話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.6/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
設定タグ:彩雲国物語 , 原作沿い , アニメ   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。