第38話 ページ41
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秀「ほとんどの貴族は皆門戸を閉じて、固い扉の外には餓死者が転がった」
秀「たまに降る雨水を飲めるように私と父様と私で一生懸命濾過して」
秀「毎日三人で街中を走り回った。静蘭は力仕事に。父様は作物の確保に。私は診療所の手伝いに____」
日に何度も気を失いそうになるのを必死に我慢して。
力が入らず震える腕で、葬送の二胡を数え切れないくらい弾いた。
ついには涙さえ涸れ果てて、瞬き一つで力が抜けた。
死ぬために生きているような気がした。
何のために、こんな思いをしてまで生きているのか。
分からなかった。
それでも、大切な二人が笑ってくれるなら秀麗も笑えた。
ないも同然の食材を工夫してご飯をつくって、小さな花を飾って、洗濯も掃除も、服の繕いものも一生懸命やった。
疲れて帰ってきた二人のために毎晩二胡を弾いた。
できることなら、なんでもした。
____日に日に痩せ細っていく二人を見て、毎日恐怖に怯えていた。
置いていかないで。
一人にしないで。
ただそれだけを祈っていた。
秀「いつか父様も静蘭も死んでしまうんじゃないかって思った」
秀「朝起きたら、二人とも冷たくなってるんじゃないかって」
秀「二人が死んでひとりぼっちになる夢を、毎晩見た。置いてかれるなら、先に死にたいと思った」
秀「眠ることも、起きることも怖かった。気が狂いそうだった……」
置いて、いかないで____
その言葉に、男の顔がわずかに歪む。
胸の痛みとともに、遥か昔がよみがえる。
かつて彼も、毎晩のようにその言葉を呟いていたときがあった。
いかないで____一人にしないで。
男のその表情に気づいたAが、安心させるように男の手を握る。
それに気づいた男はAの手をより強く握った。
秀「あれは、恐怖の毎日だったわねぇ」
明るい声に、男は我に返った。
知らず額に浮かんだ汗を拭う。
____いまだ、二人の手は繋がれたまま。
秀麗は体を起こした。
隣を座る男に、にっこりと笑いかける。
秀「____だから、私は、王宮にきたの」
「え?」
秀「あんな日々はもうごめんよ。だから霄太師の請を受けて、私はここへきたの」
ひらりと舞い散る桜。
それは象徴。
哀しみと、涙と、____平和の。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時