第28話 ページ31
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秀「もう駄目っ。何個食べるつもりなの!六個目よ六個目」
秀「ちゃんと朝ご飯食べたんでしょ?今包んであげるから、とっとときなさい」
男は素直に手を引っ込めると、優しく叩かれた手の甲を見る。
秀「え、もしかして、痛い?」
じっと自分の手の甲を見続ける男に、秀麗は慌てて訊いた。
「いや。……びっくりした」
残りの饅頭を包みながら、秀麗はちらっと男を見た。
____男の表情は、あまり動かなかった。
無表情なわけでも、冷たい感じがするわけでもないのだが、どこか、遠くを見ているような。
誰か、想っているような。
不思議な人、と秀麗は心の中で呟いた。
男は真面目に秀麗を見た。
「でも、朝ご飯は食べてないのだ。もう一つ饅頭をくれ」
ええ?と秀麗は目を丸くした。
秀「駄目よ、朝ご飯はしっかり食べなきゃ!お腹空くくらい情けないことってないんだから」
秀麗はこれだけね、と言って包みから饅頭を一つ取り分けた。
秀「ほら、お茶も飲むの。甘いお饅頭ばかりじゃ、あとで気持ち悪くなるわよ」
そそがれた桜の花びらの浮く香り高い茶に、男は目をすがめた。
素直にすすって、呟く。
「邵可が淹れるといつも苦いばかりなのだが、こういう味だったのか」
秀麗は脱力した。
あの殺人的に苦い『父茶』を見舞われていたとは何たる不運な男。
秀「……ごめんなさい。父様に家事能力は期待しないで」
秀「でも、あなたあの苦いお茶、知ってていつも飲んでくれたのね?嬉しいわ。……ありがとう」
その笑みをどう受け止めていいのか分からないというように、男は視線をそらした。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時