第27話 ページ30
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そんな印象的な男を忘れるはずもない。
秀麗は頬杖をついて、もう一人の藍楸瑛を見た。
秀「ふーん……藍楸瑛さんね」
男は視線を合わせず、饅頭を食べながらぼそぼそと話題を変えた。
「……なぜ、邵可の娘がこんなところにいるのだ?」
うっと秀麗は言葉に詰まった。
秀「……えーと、後宮に…宮仕えに……」
「宮仕え?邵可は何も言っていなかったが」
秀「べ、別に言うほどのことでもないと思ったんじゃないかしら」
今度は秀麗が冷や汗をかく番だった。
女官ならまだしも、妃の位を与えられている女性が供も連れずふらふらと外朝まで出てきているのは非常識の極みだ。
馬鹿正直に貴妃なんですなんて言えるはずもない。
「邵可の、娘……か」
男はなぜかじっと秀麗を見た。
けれど秀麗は桜を見ていたので、その視線に気づかなかった。
秀「…桜、きれいに咲いたわね」
目を細めて桜を見つめるその表情は、嬉しそうで、でもどこか悲しそうな、不思議なもの。
その横顔につと指が伸ばされる。
秀「え?え____何」
男の指が秀麗の髪にからまる。
こめかみの辺りにしなやかな指が触れていき、秀麗は反射的に赤くなった。
離れたあと、男の指先には桜の花びらが乗っていた。
____なんだ。
「好きなのか?嫌いなのか?」
ぽつりと訊かれる。何のことかと秀麗は目を見開いた。
「私の大好きな人も時々そんな顔をする」
男の視線が桜の樹に注がれるのに気づいて、ああ、と頷く。
秀「……桜は好きよ。とっても好き」
秀「でもね、うちのはもう咲かないから、ちょっとだけ……感傷的になっちゃうのかなぁ」
「咲かない……?」
秀「ええ。まあ、桜…だけじゃないんだけど」
秀麗はそれ以上は言わなかった。
男が六個目の饅頭に手を伸ばすのを見たからだ。
ぎょっとしてすかさずその手をぺしりと叩いた。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時