第21話 ページ24
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翌日の朝早く、秀麗は作りすぎた饅頭を持って府庫に向かっていた。
秀麗は何か物事を考えるとき、よく別な作業をする。
ただぼーっと考えているより、考えながら仕事をしてた方が無駄も省け、内職なら更に金も稼げて一石三鳥、というのが彼女の持論だった。
しかし後宮では内職どころか仕事もあるわけがない。
そこで気分転換兼思索の時間として、昨夜に手引きさせ、こっそり厨房に忍び込んで饅頭を作っていたのだ。
そして考えにふけりすぎてついつい作りすぎてしまった。
……まあ、余ることはないだろうから、いっか
娘にも甘い物にも目がない父・邵可だが、特に秀麗の手作り饅頭はいつも喜んで職場へ持っていく。
時々多めに頼まれたりするから、知り合いの役人に菓子好きがいるのかもしれない。
秀「あら、今日は珍しく誰もいないのね」
秀麗は府庫を覗き込み、無人を確認するとちょっと目を丸くした。
府庫は内朝寄りとはいえ、れっきとした外朝部分にある。
本来なら後宮の____しかも貴妃である秀麗がふらふらとやってくるなど言語道断なのだが、秀麗の父は府庫の主。
事前に人の少ない時間帯と経路を抜かりなく教えてもらっていた。
朝は公務と重なっているせいか、邵可以外ほとんど人はおらず、午前中を父と一緒にのんびり過ごすのが秀麗の日課になっていた。
しかし今日はその父まで見当たらない。
もっとも、姿が見えないだけで、どこかの個室で本に埋もれているのかもしれないが。
……愛しの本がこーんなにあるんだものね。そりゃ私だって喜んで現世を捨てるわ
禄まできれいサッパリ忘れる気持ちが、ここにきて秀麗にもよく理解できてしまった。
ふと、昨日出会ったAのことを思い出す秀麗。
秀「今度、府庫に招いて一緒にお茶でも飲みたいわ」
とりあえずお茶の用意をしようと、茶器を用意し、湯を沸かす。
今日は果物の香りのするお茶だ。
茶筒を開けかけた時、ふと外から漂ってくる桜の香りに気づいて秀麗は顔を上げた。
早咲きの桜が咲いているのだ。
手にした茶筒を茶器と一緒に手頃な籠ね入れると、それを提げて秀麗は府庫を出た。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時