第15話 ページ18
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
秀麗は優雅に微笑した。
少女は顔を赤らめながらしずしずと歩み寄ってきた。
ちらりと彼女の長い裾を見やり、秀麗は内心嫌な感じがした。
そして次の瞬間、それは見事に現実となった。
あまりの緊張に、少女は思いっきり裾を踏んで蹴つまずいたのだ。
とっさに茶碗は避けたが、半分くらいは肩にかかった。
しかし秀麗は気にせず、倒れこむ少女を抱きとめた。
秀「大丈夫____でしたか?」
やわらかい言葉に少女は頷きかけ、みるみるうちに青くなった。
何をしでかしたのか自覚した途端、ガクガクと震えてその場にへたりこんだ。
「わ、私……私紅貴妃様になんてことを……!」
今にも簪を抜いて喉を突きそうな勢いであった。
秀麗は内心ぎょっとしながらも、表面上は『深窓の姫君』の仮面を外さずなだめにかかった。
秀「香鈴、落ち着きなさい。わたくしは大丈夫ですから」
香「私……私」
「____何事ですか」
茶碗の割れる盛大な音を聞きつけて入ってきた背の高い女官に、秀麗はホッとした。
秀「珠翠」
二十七、八ほどの凛とした顔立ちの女官は、一目で状況を見て取った。
すぐに秀麗に心配そうな視線を向ける。
珠「秀麗様、お怪我などは」
秀「ありません。衣にかかっただけですから」
秀麗は香鈴の泣きじゃくる背を撫でながら、必死に瞬きをして合図を送った。
秀「香鈴をとがめずに。落ち着かせてあげてくださいませ」
珠「____わかりました。香鈴、おいでなさい」
珠翠ののべた手につかまり、震えて泣きながら立った香鈴は、蒼白な顔で秀麗を見た。
秀麗は安心させるように笑みを浮かべた。
秀「____涙がおさまりましたら、また花茶を持ってきてくれますか?香鈴」
香鈴はその意味を知ると、ますますぼろぼろと涙をこぼし、そして何度も頷いたのだった。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
98人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時