第9話 ページ12
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朝廷三師。それは王を訓え導く師としての官であり、この位階は王に次ぐ。
実務に携わることこそないが、まぎれもなく百官の一であり、末席の王族などよりよほど権威がある。
しかも霄太師といえば、英主と名高い前の王を陰に日向に支え続けた名宰相の誉れ高き人物である。
秀麗にとっては雲の上どころか伝説の人であった。
秀「な、な、なんでそんな人が私に会いにくるのよっ!!」
静「さあ」
静蘭も皆目見当がつかなかった。
彼自身、霄太師から直々に「紅家の姫と話がしたい。取り次ぎを頼む」などと言われた時は一瞬相手が何を言っているのか理解できなかった。
そもそも『姫』の単語が秀麗と結びつかなかったし、取り次ぎを頼むも何も静蘭の仕える家には取り次ぐほどの人手がない。
大体彼の姫は午日中に訪ねても稼ぎに出ているため不在だ。
秀「……そんな人相手に、今あの父様が一人でお相手してるわけ……?」
静「……ええ」
秀「お茶も出さずに」
静「……お茶器の場所が分からなかったんですよ」
静蘭は疲れたように笑い、お茶請けの饅頭を皿に盛っ庖厨には盗っ人に荒らされたあとのように皿や箸が散乱していた。
しかし肝心の茶器はそっくり残っていた。
……どうやら茶器を捜す努力はしたようだがその努力は実らなかったようだ。
旦那様に家事能力を期待してはいけない。
秀「まあ、お客様が来たからお茶を出そうと思ったその行動は評価してあげてもいいわ。いつもの父様を考えれば上出来だもの」
深い溜息をつきながら、秀麗はすっかり用意が整った盆を取った。
途端、秀麗の動きが変わる。
ぴんと背筋が伸び、すべるように歩き出す。
その見事に優雅な所作に、いつもながら静蘭は感心する。
ここまで完璧な作法は、宮廷の女官でさえそう見られるものではない。
それゆえ静蘭などはいつももったいなく思うのだ。
このまま時が過ぎゆくことに。
秀麗は街で生涯を終えるには、あまりに惜しい知識と教養を身につけていたから。
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フローラ(プロフ) - かなとさん、ご指摘ありがどうございます! (2019年2月27日 18時) (レス) id: 36855b5a89 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年2月27日 18時) (レス) id: 32a3956d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フローラ | 作成日時:2019年2月27日 17時