春待ち桜 (ページ9)

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「来週末、大丈夫そう？」

「はい。」

「ご両親も？」

「大丈夫です。」

短い言葉を交わしたのは、先週始めのこと

それから、予約の確認や段取りのため慌ただしく過ごし、あっという間に約束の週末になっていた

梅雨とはいえ、連日の雨にうんざりして、明日もこの調子だろうか？と気鬱になっていた

その日も、朝から重たい雲が広がっていて、いつ泣き出してもおかしくないほどだった

先にレストランに着いたタイミングで、君もご両親とタクシーから降りてくる

軽く挨拶を交わし、一緒に案内された個室に入ると、君とご両親、俺と両親が向かい合う形で席に付いた

「良いご縁があって。」

「本当にねぇ。」

親同士はこの結婚を手放しで喜んでいる様子だ

本当の事情を知らずに

申し訳ないことをしているつもりはない

お互いが良しとしているのだから、こういう形の結婚もありだろう

「式の日取りは、どうなっているんだ。」と言う父親には

「まだ具体的には。」と苦笑いで答え

これから式場の下見に行こうと思ってるんだよね、と君に同意を求めるけど

君は、ぎこちない笑みで曖昧に頷くばかりだった

振られる話に笑顔を絶やさず相槌を打ちながら、君の様子が気になり視線を向けると

心此処に在らずといった様子で、何となく違和感を感じる

「もともと大人しい方なんですけど、緊張してるみたいで。」と君の母親が気を遣う

両家の顔合わせの席だ
緊張してもおかしくはないだろうな、と思ったが

どうやら見当違いだったらしい

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君の兄、和也さんが部屋に入るなり「遅れてすみません。」と謝りながら席に付く

君の表情が、一層強張ったように見えた

話題は、俺たちの結婚からお互いの家族のことへと移り
更には和也さんのことへと広がっていった

「ご結婚なさってるんでしょう。お子さんは？」

「来年の初めに、生まれる予定なんです。」

そう嬉しそうに話す和也さんに

そうなの、おめでたいこと続きねぇ、なんて暢気に話に花を咲かせている隣で

君の顔から血の気が引いていくのが見えた