春待ち桜 (ページ6)

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君の部屋は1LDKのマンションで、自分の部屋と間取りがよく似ていた

というか、単身者用の部屋なんてどこも似たようなものかもしれない

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「期待しないで下さいね。」

そう言ってキッチンに入った君を尻目に、部屋の中を見回す

きれいに片付いた部屋は、なんとも君らしいなと思った

必要最低限な家具の中で一番目立っている書棚は、この部屋の主のようだ

整然と並べられた本を眺める

好きなのか、同じ作家のタイトルが数冊並ぶ

その中で一冊だけ

古びた背表紙を見つけて、思わず手に取った

「星の図鑑」と書かれた子ども向けの本のページをパラパラ捲っていると

「子どもの頃、父に買ってもらったんです。」

キッチンから出て来た君が言った

「何となく、捨てられなくて。」

俺の手から本を取り上げて、表紙をひと撫でした君は

...一瞬、泣いているのかと思った

「櫻井さんは、ありますか？捨てられないもの。」

本を書棚に戻しながら、そう聞かれて
少し考えてみたが、すぐに思い付かなくて

「どうかな。」と曖昧に答えた

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君の料理は、凝ったものではなかったが、どれも美味かった

妻にするなら、料理は出来たに越したことはない

「何か飲みますか？」

「何があるの？」と聞き返すと

「頂き物のワインなら。」と答えた

ほんの少しだけ考えて

「いや、車だから止めておく。」

考え直す素振りを見せて

「それとも...泊まって欲しかった？」と意地悪のつもりで聞いたけど

少し間を置いて

「そうですね。」

と、やっぱり泣きそうな表情で君が答えたから

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思わず身体を引き寄せた後

どんな風に触れたのか覚えていないけど

隣の君の閉じた瞼に

そっと唇を落とした

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明け方

君を起こさないように、ベッドから抜け出す

着替え終わった頃に、目を覚ました君に

「自宅に戻ってから仕事に行く。」と告げて

「起きなくていいよ。」そう言ったのに

玄関で靴を履いていると、昨夜と同じルームウェアに着替えた君が出て来て

「気を付けて。」と見送られると、悪い気はしなかった