春待ち桜 (ページ43)

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As One ページ43

遠くから聴こえる雨雫の音で目を覚ました

ゆっくり瞼を開けると、規則正しい寝息を立てる横顔がある

暫くぼんやり眺めてから、もう一度眠るために目を閉じると

「どうしたの？」

微睡んだ表情をこちらに向けた

「雨音で目が覚めてしまって。」

「じきに止むよ。」

「そうでしょうか？」

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あの日から、雨は降り続いている

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私たちは、生まれた時からずっと一緒

和也が風邪をひいて熱を出すと、決まって私も熱を出す

私が泣いてると、和也も泣き出す

好きな食べ物も、お気に入りのおもちゃも、全部一緒

私たちは、二人でひとつ

そうやって生きていくものだと思っていた

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いつからだろう

和也のことを兄としてのそれではなく、好きだと気付いたのは

いつからだろう

和也が私に向ける瞳に違和感を覚えたのは

お互いが違う感情を抱いていることを、お互いに理解してたけど

戸惑うばかりで自然と距離を置くようになっていた

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二十歳の夏、蒸し暑い雨の日

リビングで床に座りゲームをする和也の後ろで、ソファに凭れながら本を読んでいた

ふと、立ち上がるとキッチンへ向かい

「Aも飲む？」

こちらを見もせず、答えを聞きもせず、グラスをふたつ出した

テーブルの上に置かれたグラスから視線を上げながら、ありがとう、と言いたかけた言葉は

和也の腕の中で言葉にならず消えた

「A」

和也の手が背中を撫でる

「泣かないで。」

「和也も、泣いてるじゃない。」

同じように、和也の背中に手をまわす

涙を流していなくても、お互いに泣いていることを

私たちには分かる

私たちは、二人でひとつだ

「ごめん。」

好きも愛してるもくれず

ごめん、と謝る和也は

優しくて残酷だと思った