春待ち桜 (ページ34)

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彼は、たぶん、全て気付いている

いつ気付いたかは分からない

でも

それなのに、私と一緒に居たのだ

それは、何を意味するのだろうか

余程、私に関心がなかったのだろうか

私のことを可哀想だと思っていたのだろうか

それとも、不毛な恋を嘲笑っていたのだろうか

違う、私の知っている彼はそんな人ではない

だとしたら

「櫻井さんは...」

私のことを、どう思っていますか？

僅かな期待を抱き、そう聞ければ良かったのかもしれない

でも、もしそうじゃなかったら

臆病な自分が顔を出す

視界が滲んでいくのを感じて、誤魔化すように目を伏せる

「この結婚は、白紙に戻しましょう。契約は、終わりです。」

震えそうになる声を精一杯、取り繕って

そう告げた時も

部屋を出る時も

こうなることを予想していたかのように、彼は何も言わなかった

引き留められることを期待したわけじゃない

何も言わなかった、それが答えなんだろう

.

タクシーの中、大きく息を吐くと、途端に疲労感に襲われる

自分の気持ちを見失ってしまい、何が正解か分からない

どうすべきか分からない

ただ、私は、彼が思ってる以上に彼のことを...