春待ち桜 (ページ33)

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話したいことがある、と言われた時、なぜか不穏な気持ちに襲われた

それは、いわゆる嫌な予感というやつなのだろう

「これでいいの？」

前置きもせず口を開いた彼の言葉に、予感は確信に変わった

「何がですか？」

「今なら、まだやめられる。」

遠回しに話す彼に苛立って

「やめたいのは、櫻井さんの方じゃないんですか？」

そう言い返した

「どういう意味だよ。」

「そのままの意味です。」

本当は分かっているはずなのに、意味が分からない、といった怪訝そうな顔をするから

「百合さん、お綺麗な方ですね。」

彼女の名前を出した途端、驚いた表情に変わった

「会ったの？」

動揺を隠しきれない声

無意識だと思うけど、何度も瞬きを繰り返している

「他の人と結婚していても諦められないほど大切な人なのに、どうして私と結婚しようと思ったんですか？」

また、表情が変わった

今度は戸惑った表情だ

「上司の顔を立てるため？出世のため？」

それとも、と続けて

「彼女を忘れるためですか。」

「それは、君だろ。」

「話をすり替えないでください。」

「じゃあ、君はどうして俺と結婚しようと思った？距離を置けば、その人を忘れられるとでも思った？」

苦い指摘をされ答えられない私に、ゆっくりと首を振り

「そんなの、根本的な解決にならない。」

そう言い切った

あの人のことを、忘れたかった訳じゃない
忘れられるなんて、思っていない

そもそも、それでも構わないと言ったのは彼なのに

彼の意図が分からなくて

「どういう意味ですか。」

思わず、聞いたのが間違いだった

「その人と、離れることはできないよ。君たちには、持って生まれた絆があるだろ。」

その言葉に、愕然とした