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＊ ページ27
病院に着きICUのフロアへ向かうと
入り口の前に置かれたベンチに座る君と和也さんの姿が目に入った
よく似た顔の二人が寄り添う姿は、まるで二人でひとつ
支え合うように重ねられた手に、なぜか苛立ちを覚えると同時に
他人が決して踏み込めない、深い場所で繋がっているのを感じた
二人の傍に近づきながら
ひとつ、呼吸をおいて
「A。」
なるべく優しく名前を呼ぶと、弾かれたかのように顔を上げ、重ねられた手は簡単に解けた
立ち上がると震えた手で俺のジャケットの袖を握り、不安そうな瞳で見上げる
大丈夫と言い聞かせるように腕を撫でると
「俺は、母さんのところにいるから。櫻井さん、あとはお願いします。」
そう言い残し、気を利かせたのか、和也さんは家族控え室へ入って行った
.
.
「少し落ち着いた？」
薄暗い廊下のベンチに座り缶コーヒーを手渡すと、ありがとうございます、と消え入るような声で言った
「容態は？」
「まだ、意識が戻らなくて。」
「そうか。」
.
音の無い静かな空間
俺達の間には微妙な距離があって
その隔たりを埋める術が分からない
重なる手が脳裏に焼き付いている
君の手に触れることができなくて
行き場を無くした手で背中を撫で、暗い窓の外に目を遣ると
予報どおり、雨は雪に変わっていた
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作者名：雪乃 | 作成日時：2019年11月27日 16時
