春待ち桜 (ページ21)

今日:16 hit、昨日:0 hit、合計:4,375 hit

＊ページ21

「今度の週末は、学会に行くので。」

週末はどうする？と聞かれて、そう答えた

「学会？どこでやるの？」

「神戸です。金曜日から行きます。」

.

.

そんな遣り取りをしたのは、もう先週のことだ

久し振りに会う大学病院の先生に一緒に食事でもどうですか？と誘われ

会場からすぐ近くにあるお店で、他の先生方と食事に出掛けた

あのシンポジウムは、このテーマは、と学会の延長のように意見を言い合ったり

最近の話題や自施設のことなど様々な話で盛り上がる

同じ分野の集まりだから、興味のある話題ばかりだし、楽しく、大いに有意義な時間を過ごすことができた

ただ、話しに相槌を打ちながらも、ふとした瞬間に彼のことが過って

一度気になってしまうと、なかなか頭から離れなかった

「私は駅の近くのホテルなので。」

会場近くのホテルに宿泊する数人と別れ、駅までの道を同年代の先生と世間話なんかをしながら歩く

初めは、盛り上がりましたね、なんて話していたけど

ほんの少し間が空いて

「二宮先生、何だか雰囲気が変わりましたね。」と急に言われて

そうですか？と首を傾げると

「上手く言えないけど、柔らかくなりました。」
いや、どう言えばいいのかなぁと頭を抱えるから

笑いながら、ありがとうございます、と返した

.

ホテルの部屋に戻ると、ベッドに腰掛けて大きく息を吐く

彼は今、何をしているだろうか？

仕事はもう終わっているだろう

他の女性と一緒に過ごしているのだろうか？

思えば、ここ最近はほとんどの週末を彼と過ごしていて

一緒に過ごさない週末に居心地の悪さを感じている自分の感情が分からなくて、少し戸惑った

何となく、バッグからスマホを取り出す

彼からの不在着信を見て

もし、彼も同じだったら

迷わず通話をタップした