春待ち桜 (ページ3)

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花残月ページ3

「A？」

ふいに呼ばれて振り返ると、そこには兄の姿があった

ここは兄の職場から近かったことを思い出し、違う場所で待ち合わせるべきだった、と後悔した

「久し振りだね。」

「うん。」

「元気だった？」

「うん。」

気のない返事を繰り返す私に

「今日はどうしたの？待ち合わせ？」と苦笑いする兄の肩越しに彼の姿を見つけて安堵した

.

「こちらは？」と私に尋ねる櫻井さんに

「兄の和也です。はじめまして。」

櫻井さんですよね、母から話は聞いています

と軽く会釈をした

「たまには家に顔出しなよ、母さんが心配してる。」

そう言って雑踏に消える背中を見送ることは出来なかった

.

.

.

「口に合わなかった？」

そう声を掛けられて、フォークの手が止まっていることに気づいた

「いえ、美味しいです。」

顔を上げると何かを考えるように指先で唇に触れる彼が

「目元かな？よく似てる。」

と答えを見つけた様子だった

似てる、と言われて何のことかすぐに分かったけど

「何がですか？」と分からないふりをしてみた

「お兄さんに。言われない？」と続ける彼に

「双子ですから。」と答えた

.

「お兄さんの職場はこの辺なの？」

「結婚は？」

「子どもはいるの？」

矢継ぎ早な質問に最初は答えていたけど、だんだんと苛立っている自分を感じて

「どうして兄のことを聞くんですか？」

やや強い口調で聞くと

「聞いちゃいけなかった？」と申し訳なさそうに眉を下げる彼に

あの人を重ねた