春待ち桜 (ページ17)

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夜明け前、目が覚める

隣で寝息を立てる彼の端正な顔を、自分の特権かのように眺める

指先で唇に触れ、首筋へと滑らせると、小さく唸り寝返りを打った

もう一度眠ろうと思ったけど、できなくて

そっとベッドを抜け出した

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寝ている彼の姿に、あの人が重なる

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昼間の暑さを引き摺ったままの、寝苦しい夜だった

決して打ち明けることの出来ない想いを抱え
それを見せないように隠し続けて

でも、そんなことを長く続けられる訳もなく

どうしてあの夜だったかは分からないけど

今まで秘めてきた想いが溢れてしまうのを止められなかった

私の想いなんて知らずに、静かに寝息を立てる
あの人の薄い唇に指先で触れて

そのまま、首筋へと滑らせる

両手を首に掛け、無意識に力を込めようとしたその時

小さく唸り、寝返りを打ったことで正気に戻り
慌てて手を引いた

再び、静寂が訪れて

尋常じゃなく震える手を握り締め、声を押し殺して泣いた

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まだ薄暗い砂浜を歩く

海は凪いでいて、静かな波の音が心地よく響く

あんな過去のことを、戒めのようにいつまで引き摺ればいいのだろうか

それとも、あの時、消えて無くなればよかったのだろうか

水平線から朝日が昇り始めて、海と空の蒼がひとつになるのを眺める

突然、名前を呼ばれて振り返ると腕を掴まれて

驚いていると、今まで見たこともないほど焦った表情の彼が

「なに、してるの。」

今まで聞いたこともないほど、怒気を含んだ声で言った

あまりに急なことで答えられずにいると

「冷えてるから、戻ろう。」

今度は優しい声色で言いながら手を繋ぎ直すから

その手を握り返して応えた