寝覚月 ページ16
「来月末の連休、休みが取れそうなんだけど。予定ある？」
「その連休なら、大丈夫だと思います。」
また、結婚式の打ち合わせでも入るのだろうかと考えていたら
近場だけど、旅行に行かないか、と言われた
意表を突かれて言葉に詰まっていると
「どう？ダメかな。」と窺うように聞かれたから
「ダメじゃないです。」そう答えたら、電話の向こうで笑っていた
.
.
.
行き先も知らずに、迎えに来た車に乗り込む
ステレオから流れる音楽に合わせるように、ハンドルを握る指で一定のリズムを刻んでいる
どうやら上機嫌な様子を見て、視線を外へと移した
「1時間ちょっとで着くと思うから。」
しばらくすると、やがて海岸線へと出る
まだ暑さの残る時期だが、空は明るく澄んだ御空色で秋の訪れを表している
エアコンの効いた快適な車内で、時折、結婚式の話や仕事であったことを話しながら車はスムーズに流れる
途中のサービスエリアで休憩し、宿に着いたのは彼の言ったとおり1時間ほど経った頃だった
案内された部屋には露天風呂もあり、海と繋がっているような景色に見惚れていると
「一緒に入る？」
彼が、さも当然のように言うから
「遠慮しておきます。」と即答した
苦笑いしながら、大浴場もあるよ、と言うので
じゃあ、そっちにします、と答えた
夕食後、ちょっと仕事させて、とノートパソコンを開いた彼とは少し離れて
窓辺の椅子に腰掛けて、微かな波音を聴きながら漆黒の海を眺めていると
何だか、連れて行かれそうな感覚に陥って
不安を紛らわすように、彼の背中へ視線を移した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪乃 | 作成日時：2019年11月27日 16時
