春待ち桜 (ページ2)

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花曇りの日だった

待ち合わせの15分前に着くと、店内をぐるりと一周見渡す

ウェイトレスに案内された席に着くと、腕時計で時間を確認した

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来ないかもしれない

そんな考えも頭を過ぎったが、何となく、約束を反故にすることは無いような気もしていた

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約束の時間より5分ほど前に店に入ってきた君に
小さく手を挙げ合図を送る

お見合いの時とは違いカジュアルな格好で現れた君は、席に着くなり開口一番

「お断りして欲しいとお願いしたはずですが。」

そう不服そうな表情を向けた

「お願いはされたけど、了承したわけじゃない。」と答える俺に押し黙る

「今日はどうして来ようと思ったの？」

ばつが悪そうな顔で
「母が、どうしてもと言うので。」と答えた

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見合いの時と同様に会話は途切れ途切れで、やはり話すことが無くなると

店内の騒がしさとは裏腹に、二人の間にだけ静かな時間が訪れた

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「忘れられない人がいるんです。」

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沈黙を破るように、でも、ぎりぎり聞き取れるか位の声で君が言った

たぶん、断る口実だろうが

「それでもいいよ。」と言った俺に

信じられないという表情で、二の句を継げずにいるようだった

改めて、「結婚する気はないんです。」という君に、俺にもその意志がないことを伝えると

更には怪訝そうな顔で俺を見つめた

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「俺にとって恋愛なんて厄介なものでしかないから。でも、世間体と出世のためには妻が必要なんだ。君だってご両親を喜ばせるための夫が必要じゃない？」

弱味を突かれたのか、目を伏せる君に

「結婚するかわりに、お互いは尊重したい。家に納まる必要はないし、仕事は続けてもらって構わない。」

「なんなら、ほかに男を作ってもいい。」そう付け加える

「そのかわり、君も俺には干渉しない。」

良い条件だと思うけど？と告げると、伏せた睫毛をゆっくりと上げ

「それは、あなたに他の女性がいても？」と聞いてきた

「そう。どう？君からの条件があれば聞くけど？」

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「では...愛してると言わないでください。」

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それだけです、と言った君がどんな表情をしていたのか

良く覚えていない