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「来てくれたんですね。ありがとうございます」
「…あんな風に言われたら、来るしかないじゃない。」
幸村先生は苦い顔をしながらもそうつぶやいた。
スーツ姿のままで、そうとう急いでくれたのは容易に想像がついた。
「伊沢さんもいらっしゃるんですね」
「Aを放っておくわけにはいかないですから」
拓司はそう言いながらお冷に口をつけた。
居酒屋なのにも関わらずお酒類は一切頼まず、先生は唐揚げを頼んでいた。
「そう。篠宮さん、いい人みつけたわね」
「…私には、もったいないほどに」
先生は私の返事に笑みを見せると、今度はある資料を取り出した。
「…それは?」
ぶあついそれに私が首を傾げると、先生はそっとそれを開く。
「これは篠宮さんの成績一覧。…あなたは、中2で一気に成績が落ちたの」
「…どういう…」
聞き返そうとしたのを、拓司が手で制した。
小さく首を振った拓司に私はしぶしぶ引き下がった。
「詳しくは私も聞けなかった。ただ、当時のあなたは“警察に相談している”そう言っていたわ」
先生は少しだけさみしそうに微笑んだ。
おそらく、先生は知っているけど、言いたくないんだと思う。
警察という機関に、頼ろうとしているんだ。
「今の私は、警察には相手どってもらえる気がしません。幸村先生、あなただけが頼りなんです。」
先生の息をのむ音が微かに響いた気がした。
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虹希(プロフ) - sekainoowarilovさん» 期待以上のストーリーに仕上げることができていたでしょうか。それなら本当にうれしいです。話のまとまり出会ったり、収束が付いていないのではないかと不安だったので…。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 637c3be836 (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - リクエストありがとうございます!!期待してた以上に素敵な作品でほんとうに、素敵です(語彙力) (2020年1月6日 17時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - 京北わかさん» ご期待に添えていたら幸いです。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです! (2020年1月6日 13時) (レス) id: 6f6e5985a0 (このIDを非表示/違反報告)
京北わか(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございます!とっても良かったです! (2020年1月6日 9時) (レス) id: 4e915e623c (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - 虹希さん» 虹希さんのかわかみかっぷるなども拝見していてほんとうに毎日ニヤニヤしているのでこちらこそありがとうございます!! (2020年1月6日 8時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)
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