検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:34,526 hit

58. ページ13

伊沢side



「…Aさんだ」

「えっ、こうちゃんどこ?!」



こうちゃんに指さされた方向を見ると、確かにAらしき人が海の方へと足を進めていた。



「…伊沢」

「…ッ、ハハ、間に合わせるよ。絶対に、殺したりなんかしない」



福良さんにそういうと、福良さんは満足したのか俺の背中を押した




「早く行きなよ」



川上、須貝さん、そして山本。



三人が三人とも俺のことを鋭い目で見てきていた。



「間に合わなかったら伊沢もぶっ飛ばす」

「ハハ、そりゃ怖いわ」



俺は須貝さんにそう返して、海の浜辺を全速力で走っていく。



Aが顔をつけてしまったのを見て、とっさに俺も潜ってしまった。



.



「っはぁはぁはぁ…」



無我夢中だったから覚えていないけど、気が付いたら俺は、足のつく場所にずぶぬれで立っていた。



「…え、たっくし…?」



ケホケホと席をしながら、彼女は俺のことを見上げる。



「バカ!!」



ぬれた髪から、その瞳が伺えた。

怒ってやろう、怒鳴ってやろう、そう思っていたのに、その瞳を見た途端、そんなことはどうでもよくなった。



「お願いだから、死なないでよ」



代わりに出たのは、今にも消えそうなくらい小さな声での切実な言葉だった。



ふと砂場を見ると、QuizKnockのメンバー全員がそろっている。



「俺はどんなAでも好きだし、離すつもりも、離されるつもりもさらさらない」



Aの目が見開かれた。



「昔のことに絶望するのも、仕方ないと思う。でも」



彼女の両頬を抑えて、彼女の瞳を見つめた。



「昔のことなんてどうでもいいと思えるくらいに、俺と、俺達と思い出を作ろう。Aのふるさとはこの地なんかじゃなくてもいい」



彼女の目から、水が落ちてくる。

その温度から、それが海水でないことは明らかだった。



「QuizKnockがAのふるさとだから」



その水を親指で優しくぬぐうと、彼女は子供のような、真っ直ぐで純粋な笑みを浮かべた。



「ありがとう」



LINEでも送られていたその文字だったけど、今彼女が言った言葉は、意味が違うだろう。



QKのみんなの肩の力も、一気に抜けたように感じた。

After Story→←57.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
213人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , 伊沢拓司
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

虹希(プロフ) - sekainoowarilovさん» 期待以上のストーリーに仕上げることができていたでしょうか。それなら本当にうれしいです。話のまとまり出会ったり、収束が付いていないのではないかと不安だったので…。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 637c3be836 (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - リクエストありがとうございます!!期待してた以上に素敵な作品でほんとうに、素敵です(語彙力) (2020年1月6日 17時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - 京北わかさん» ご期待に添えていたら幸いです。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです! (2020年1月6日 13時) (レス) id: 6f6e5985a0 (このIDを非表示/違反報告)
京北わか(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございます!とっても良かったです! (2020年1月6日 9時) (レス) id: 4e915e623c (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - 虹希さん» 虹希さんのかわかみかっぷるなども拝見していてほんとうに毎日ニヤニヤしているのでこちらこそありがとうございます!! (2020年1月6日 8時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:虹希 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月27日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。