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伊沢side
「…Aさんだ」
「えっ、こうちゃんどこ?!」
こうちゃんに指さされた方向を見ると、確かにAらしき人が海の方へと足を進めていた。
「…伊沢」
「…ッ、ハハ、間に合わせるよ。絶対に、殺したりなんかしない」
福良さんにそういうと、福良さんは満足したのか俺の背中を押した
「早く行きなよ」
川上、須貝さん、そして山本。
三人が三人とも俺のことを鋭い目で見てきていた。
「間に合わなかったら伊沢もぶっ飛ばす」
「ハハ、そりゃ怖いわ」
俺は須貝さんにそう返して、海の浜辺を全速力で走っていく。
Aが顔をつけてしまったのを見て、とっさに俺も潜ってしまった。
.
「っはぁはぁはぁ…」
無我夢中だったから覚えていないけど、気が付いたら俺は、足のつく場所にずぶぬれで立っていた。
「…え、たっくし…?」
ケホケホと席をしながら、彼女は俺のことを見上げる。
「バカ!!」
ぬれた髪から、その瞳が伺えた。
怒ってやろう、怒鳴ってやろう、そう思っていたのに、その瞳を見た途端、そんなことはどうでもよくなった。
「お願いだから、死なないでよ」
代わりに出たのは、今にも消えそうなくらい小さな声での切実な言葉だった。
ふと砂場を見ると、QuizKnockのメンバー全員がそろっている。
「俺はどんなAでも好きだし、離すつもりも、離されるつもりもさらさらない」
Aの目が見開かれた。
「昔のことに絶望するのも、仕方ないと思う。でも」
彼女の両頬を抑えて、彼女の瞳を見つめた。
「昔のことなんてどうでもいいと思えるくらいに、俺と、俺達と思い出を作ろう。Aのふるさとはこの地なんかじゃなくてもいい」
彼女の目から、水が落ちてくる。
その温度から、それが海水でないことは明らかだった。
「QuizKnockがAのふるさとだから」
その水を親指で優しくぬぐうと、彼女は子供のような、真っ直ぐで純粋な笑みを浮かべた。
「ありがとう」
LINEでも送られていたその文字だったけど、今彼女が言った言葉は、意味が違うだろう。
QKのみんなの肩の力も、一気に抜けたように感じた。
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虹希(プロフ) - sekainoowarilovさん» 期待以上のストーリーに仕上げることができていたでしょうか。それなら本当にうれしいです。話のまとまり出会ったり、収束が付いていないのではないかと不安だったので…。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです。 (2020年1月6日 17時) (レス) id: 637c3be836 (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - リクエストありがとうございます!!期待してた以上に素敵な作品でほんとうに、素敵です(語彙力) (2020年1月6日 17時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - 京北わかさん» ご期待に添えていたら幸いです。これからも虹希を応援していただけると嬉しいです! (2020年1月6日 13時) (レス) id: 6f6e5985a0 (このIDを非表示/違反報告)
京北わか(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございます!とっても良かったです! (2020年1月6日 9時) (レス) id: 4e915e623c (このIDを非表示/違反報告)
sekainoowarilov(プロフ) - 虹希さん» 虹希さんのかわかみかっぷるなども拝見していてほんとうに毎日ニヤニヤしているのでこちらこそありがとうございます!! (2020年1月6日 8時) (レス) id: 8cc800abef (このIDを非表示/違反報告)
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