_fkr ページ40
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「えっ、急にどうしたの?」
「言いたくなったから」
“そっか”
福良は微笑んだ。
普段あまりそういうことを言わないから、もう少し驚いてくれてもよかったのに。
「驚かないんだね」
「ん、まあね」
“だって知ってるし。Aが俺のこと好きなの”
そうつづけた福良さんは自信のみなぎる笑顔を私に見せてきた。
普段見せない自信家な彼の様子にちょっとだけ微笑んでしまう。
クイズのときもそうだけど、時折見せる彼の自信みなぎる彼の様子は本当にかっこいい。
普段包容力あふれる彼だから、ちょっと俺様な様子を垣間見た気がするからだろうか。
「福良が私のこと大好きなのも知ってるよ」
「…もうっ!」
少し耳を赤く染めた福良さんに愛らしいなぁと思わず微笑む。
好きだなぁと思っても仕方ない。
「ねえ、A」
「なーに?」
撮影部屋の机にノートパソコンを置いてカタカタと作業していると、隣に座っていた彼がそっと私の頬にキスをおとした。
「名前で呼んでよ」
「え」
彼との付き合いは大学入学当時からで、容量の悪い私にいつも手を貸してくれていた。
呼び方を変えるなんて、今更恥ずかしい。
「言えない?」
「…っ」
恥ずかしさと、そのあおる様な微笑みにたじろいでしまう。
可愛さと同時にそんな感情を混ぜているなんてずるい。
そんな表情をされたら、やるしかないと思ってしまう。
「…け、けん…くん」
福良が黙ってしまったので、逃げ出すように撮影部屋から出た。
出入り口側に私がいたのが不幸中の幸いと言うか。いや不幸であることには変わりないんだけど。
「あれ、Aさんじゃん。どうしたんすか?」
「いや、今はちょっと…」
“なに、福良さんから手を出された?”
テレビの取材の帰りにオフィスに寄ったであろう伊沢の声に顔を上げた。
「え、まじで?」
「いや、違う!…福良を下の名前で読んだら黙ったから」
“あー…なるほどね”
伊沢は意味ありげにほほ笑むと撮影部屋の扉を喜々として開けていく。
そんな様子に思わず息を吐いた。
福良が顔を真っ赤にして伏せていたと知るまであと5分。
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