_sgi ページ39
.
「年上をからかわないの」
須貝さんは私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
からかってなんかない。
そんな言葉を飲み込んでしまう。
言いたいことを言えないのは昔からの私の悪い癖だけど、言いたいことを言ってしまえば周りに迷惑がかかると思い込んでしまうのだ。
「…須貝さん」
「んー?どうしたー?」
記事を作成しているのか、カタカタとパソコンをいじりながら返事をしてくれた彼に、私は詰め寄った。
「どうしたら、子供扱いをやめてくれますか…?」
私のエゴかもしれない。
でも、彼に想いを伝えるためには、このエゴを通さないといけないと思ってしまった。
戸惑ったように笑った彼を見て、迷惑をかけてしまったと心の中で反省した。
「…俺が逃げてるだけだよ」
「えっ?」
ちゃんと聞こえなくて聞き返してしまった。
須貝さんは苦しそうな笑顔で“なんでもない”と言うと、先ほど続けていた作業に戻ってしまった。
「…っ、須貝さん!!」
彼に向かって叫ぶと、須貝さんはすっと顔を上げた。
「…私、諦めません!」
彼に想いを伝えて、玉砕しても。
諦められない恋をしている。
「…ハハ、いいよ。俺も覚悟しとくね」
迷惑をかけてしまう。
そんなことを、考えていられなかった。
彼のことが好きだ。
その想いは、変わったりなんかしない。
“須貝さんあれいつまで持つと思う?”
“俺の予想だともって1ヶ月”
“うるさいよ君たち!”
私が閉めた扉の向こう側で、こんな話をしていたと知ったのは後日談。
452人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ