応援メッセージ_ymmt ページ16
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『祥彰、頑張ってね』
「うん、ありがとう母さん」
母にお礼を言えば、母は心配そうにしながらもその電話を切った。
早稲田大学 理工学部入試前日───────
前日からビジネスホテルに泊まり、明日に備えてきた。
「…大丈夫」
緊張で今から手が震えているし、いつも通りなんて絶対にむりだ。
そ刻一刻と迫ってくる受験に、恐怖と緊張と、そして少しの楽しみが僕の体を埋めつくした。
もう一度、明日に向けて単語帳でも見直そうか、そう思って、カバンからいつもの単語帳を引っ張り出した。
…刹那、携帯の呼出音が鳴る。
単語帳をめくりながらだったから、相手なんて見てなかった。
「…はい、祥彰です」
『あ、出た。よかった』
聞きなれているけれど、僕の大好きな声だった。
「Aかぁ、誰かと思ったよ」
『ごめんごめん。私も塾の都合が着いたのがこの時間でさ』
推薦入試で既に第一志望への進学を決めている彼女だけど、自分の向上のために未だに塾に通い続けていた。
「どうしたの?Aからなんて珍しいじゃん」
君への恋は、僕の一方的な片想いで。
『がんばれよ』
たった、五文字だった。
多分、他の人からしてみれば素っ気ない応援。
「…はは、Aから言われたら頑張るしかないなぁ〜」
でも、その五文字は、先程の母と父の30分にも渡る応援よりも、僕の心に刺さってしまった。
「ありがと、じゃあね」
『ん、おやすみ』
電話を切っても、先程の彼女の声が頭に残った。
君からの応援メッセージが、なによりも。
プレゼントをご所望ですか?_mzkm→←その恋のスタートはフェードイン_sgi
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