片想いに終止符を＿trsk ページ14
.
「修功、この証明なんだけどさー…」
そう言いながら、彼女は俺に証明途中のレポート用紙を差し出してきた。
「ん？何？」
「このまま計算すると答えが合わなくなるんだよね」
“どっかで計算ミスったのかなー”
なんて言いながら、俺にそのレポート用紙をずいと押し付ける。
「見てくれない？」
「ん、いいよ」
“やった、相変わらず修功は優しい”
そう言いながらにこやかに笑う彼女を見て、思わず息を吐いた。
「…俺は、誰にでも優しいわけじゃないよ」
“お礼にコーヒー買ってくるわー”
そう言いながら自販機まで駆けて行った彼女の背中に呟いた。
勿論彼女に聞こえるはずもなく、俺がただ呆然と立っているだけなのだけど。
「…片想いは実らない定理ねぇ…」
彼女が差し出してきたそれは、今の俺に告げられている気分だった。
「修功！できた？」
「ん、このまま計算して大丈夫だよ」
「本当！よかった」
安心したように微笑む彼女を見て、思わず想いを口に出しそうになった。
そんなのは許されるはずがない。
だって、彼女の指には光るものがあるのだから。
「じゃ、俺はこれから用事あるから」
「そうなの？ごめんね、遮って」
「いやいいよ」
笑いながら手を振ると、彼女もそうしてくれる。
きっと彼女にとって、俺はいい同期、もしくは親友なのだろう。
「…すきだよ」
彼女の居ないところで、ポツリとつぶやいた。
言葉にすると、想いが溢れてくると同時に、満足してしまう自分がいた。
「…よし、伊沢さんのところ行って慰めてもらおう」
彼に言ったところで、どうせからかわれるだけなのに、なんとなく彼の明るさに助けてもらいたかった。
片想いに終止符を
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 452人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
