敵対関係夫婦_k-chan ページ7
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「…」
いつもは賑やかになる二人の夕食。
けれど今日はどう頑張っても声を出せなかった。
「なんでこうくんが担当検事なん」
「主任に頼まれた」
それを言われると何も言い返せない。
裁判官である私は、担当検事にこうくんの名前が上がる事件は避けてきた。
そうしても私情が混じるし、そんな裁判官は失格。
けれど今回はできなかった。
「そっちこそ、俺が担当する案件を持つなんて珍しいね」
「…持ちたくて持ったわけじゃないし…」
最高裁判所裁判官。
若くしてその地位に上り詰めた私に先輩たちが“若いんだから”と案件をいくつもいくつも押し付けてくる。
そのうちの一つがこうくんの担当案件だった。
「裁判官と検察官って立場上いつかこうなるとは思ってたけどね」
大学生になって出会い、同じ法律を学び、国家公務員試験をパスして、つかんだそれぞれの夢。
お互いに否定することなく、今までを過ごしてきた。
「…気にしてないの?」
「気にしてないわけじゃない。けどそれが理由でAと話せないっていうのは嫌だ」
私が作ったナポリタンを口に運びながらそう言ったこうくんに思わず笑みが零れてしまった。
「好きだよ」
「なんだよ急に」
赤い顔を隠すようにそう言ったこうくんに私は再び笑いかける。
「ただ思ったこと伝えただけー」
“何それ”と笑いながら言った彼は私に対してこう続ける。
「俺は大好きだけどね」
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