Another Story

井上咲様リク 意外な関係＿kwkm ページ32

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「母さんただいまっ！！」

「お帰りー。引越し先よく迷わなかったね」

「流石に住所があればGo〇gle先生使えるって。東工大生舐めないでよ」



笑いながらそう言うと“そうね、ごめんごめん”と詫びる気を感じられない母。



「お隣の人の息子さん東大生なんだって」

「えっ、そうなんだ」



冷蔵庫から頼んでおいたプリンを取り出し、ダイニングテーブルに座る。



「相変わらずプリン大好きだよね」

「へへ、まぁね」



プリンはカラメルがない、ちゃんと私仕様になってる。流石母さん



「んー…おいひい…っ！」

「作りがいがあるわ、本当」



たまに食べたくなって送って貰うんだけど、私はどのプリンよりも母さんの作るものが一番だと思っている。



「そのお隣さんの息子さんなんだけどさ、QuizKnockっていうやつでYouTubeやってるみたいなの」

「へっ、苗字は？！」



QuizKnockのYouTubeで関西、なんてほぼ1人に断定できるけど、まだ不確定要素があった。



ほら、うちみたく引越し、みたいにね



「確か川上、だったっけ」



…表札ちゃんと見とけば良かった。



「A今日彼氏連れてくるんでしょ？」

「…う。」



そうだった。



拓朗と近いって言われてじゃあおいでよ、とかほざいたんだった。



何ヶ月か前の自分を恨みながら私は“そろそろ来ると思う”と言う。



「なんて方なの？」

「川上」

「…同じ苗字？」

「なわけ」



ピンポン、と呼び鈴の音がリビングに響いた。



ああ、くそ もうどうにでもなれ。



そう思いながら扉に手をかける。



「川上くん、だっけ」

「はい」



でも私より先に母さんが扉を開けていた。



「早く娘貰ってよ。このお転婆野郎を」

「言い方があるでしょ」



拓朗はそんな母さんに目を見開いたけど、直ぐに笑顔に移した。



「はい、今日もそのつもりでしたから」



“川上さんならご両親もいい方だもの、喜んで差し出すわ”といつもの様に笑った母さんに思わず頭を抱える。



「面白い人だね」

「…そういう仮面被ってるだけだよ…」



でも、拓朗とのことを認めてもらえて少し嬉しいかな。



そんな呟きは心の中にしまった。

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