Accueil【伊沢拓司】 (ページ19)

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山本side

『山本さん今空(あ)いてますか？』

こうちゃんからそんな連絡が届いてから、そろそろ30分が経過しようとしていた。

「すみません、お待たせしました」

「ホントだよー。何、どうかしたの？」

僕が尋ねると、こうちゃんは少しだけ気まずそうに下を見つめる。

「…山本さん、Aさんのこと好きですよね」

でも、最終的には僕の方を向いて、そうやってハッキリと言った。

「好きだよ？僕がここに入ったのだって伊沢さんとAさんに憧れてだし…」

「そういう好きじゃないです」

“好きじゃないわけないじゃん”

そう続けようと思っていた。

でも、こうちゃんは何かを見据えるように僕の目を見つめる。

「…そういうこうちゃんは？」

こうちゃんだって、病院での彼女を見てきていた。

好きになっていたって、何も変じゃない。

「俺は尊敬ですよ。あんな人になりたいです」

「僕も一緒だよ」

彼女のようになりたいと思うのは、本当のことだ。

そしてそれは、本当に難しいことだということも理解している。

「…でも、こうちゃんの言うことも事実だな…」

「…やっぱり、山本さんもか」

こうちゃんの言葉は、まるで僕以外もそうだと言っているようだった。

「…どういうこと？」

「いや、なんでもないです。今日は俺が奢ります」

そう言って笑いながらはぐらかした彼に、しつこく聞くことはできなかった。