弐拾陸 ページ27
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「…お待たせ、いたしました」
「…なぜあの時、俺をも外に追い出した。」
私とは目もあわせないまま、降谷さんはそう言った。
「バーボンとゼロが、一緒にショッピングモールへきている、その事実を隠すためでした。」
私がはっきりそういうと、彼は小さく“そうか”とだけつぶやく。
「なら、一ノ瀬を連れて行けばよかっただろ。兄弟で仲睦まじく」
「…組織の中の私と悠馬は、確かに仲がいい、という設定です。ですが、一緒に買い物に出かけるほどの間柄じゃない」
降谷さんは苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。
「…俺の同期の二人は、爆弾で殉死している。」
「捜査資料で拝見しました。存じ上げております。」
それでも、目を向けることなく、彼は建物を見上げた。
「ここが、その三つ目になるかと思ったんだ」
「へっ」
抜けたような声を出すと、ちょっとだけ笑みを浮かべた降谷さんは、ようやく私のほうへと顔を向ける。
「お前まで、爆弾で失うかと思った」
「…な、んで」
「ようやく、笑いあえる仲間を見つけたと思ったんだ。」
“俺、本当は弱いんだよ”
そう、はかなく笑った彼は、今にも消えてしまいそうだった。
「…降谷さん」
「解体も、本当はお前がやったんだろ」
さえぎられた言葉に私は小さくうなずいた。
「ありがとな。国を救ってくれて」
「…当然のことをしたまでです」
私がそういうと、降谷さんは優しく私の頭をなでる。
「お前には、消えてほしくないんだ」
「困った上司ですね。国に身をささげているので、断言は致しかねます」
「…お前らしいな。上等だよ。俺もお前の隣で、ちゃんと身を張るさ」
思わず顔を見合わせて、同時に吹き出してしまった。
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冠 - Victoriaって勝利の女神と言う解釈であっていますか? (2019年12月24日 16時) (レス) id: ebdf59309e (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - ののいろ系女子さん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします (2019年1月20日 13時) (レス) id: 14232fb1c5 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - 凄く面白いです!最初は降谷さんの姉だと思ってたんですが見てみるとちがくて、でもこれはこれで良くて、最高です!続き楽しみにしてます! (2019年1月18日 22時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
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