我が家の兄弟妄想 (ページ10)

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うちの父は変わっている。

今もドアの前でしゃがみこみ、盗聴まがいのことをしている私たちにいつの間にか混ざってきた。

「お父さん何してんの」
「翔に彼女ができたんじゃないのか？」
「違うわ…」

できたら今頃私と莉乃と中にいる3人死んでるわ。

「なんだ、気になるから盗聴してるのかと思った。…ん？じゃあ何してんだ？」
「いいから着替えてきなよ…」

納得しきれないような顔で去っていく父に、ホッと胸をなでおろす。

これは不審に思われた。今のうちにでもリビングに戻っておこう。

「もっと聞きたかったのに」
「あのね？あんたが期待しているような声が聞こえたか？」

そう、ずーっと盗聴やたまに覗きをしていたが、会話の内容は至って普通。

途中から雅紀も真面目に勉強しだしたし、大野さんは寝ていた。
和也は漫画を読んでいて、お兄ちゃんは雅紀に教えながら自分の勉強。

思わず「おいこら、いちゃつかんかい」と殴り込みに行こうと思ったぐらいである。

「あれ？降りてたのか」
「いつまでもあんなことしてらんないし」
「はぁ？」

それに父にこの会話に混ざってほしくない。
理由はまた言うとして、今は真面目に勉強しておく。

「テスト週間か」
「まぁね」
「それはそうと、お友達は帰らなくていいのか？」
「明日は土曜日で、部活も停止中だから、大野くんは泊まらせようかなって」
「はぁぁ！？」

聞き捨てならんぞその言葉。

「ちょ、A、やめてよぉ」
「いや、だって！聞いたでしょ！？」
「え？何か不都合でもあった？」

いやむしろ好都合だけど！

「ええ、いいなぁ。でも明日用事あるし、そろそろ帰るわ。雅紀呼んでくる」
「お母さんによろしくね」
「はーい、お邪魔しました」

莉乃は雅紀と帰り、今女子は私だけ。

普通の女子ならば「やだイケメンばっかり…！」であんなことやこんなことを想像するだろう。

が、私は違う。

これからこの家で起こるであろう三角関係、そして修羅場に期待する。

もちろん、お兄ちゃんを巡る大野さんvs和也の三角関係を。